マトリックス・レボリューションズ

2003/10/30 新宿ミラノ座
シリーズ三部作の完結編はこれまでで一番期待はずれの内容。
アクションシーンにあまり見応えがないのは残念。by K. Hattori


 人気シリーズの完結編だが、正直なところ「やっと終わった〜」という疲労混じりの達成感しか残らなかった。『マトリックス』『マトリックス・リローデッド』から続いた三部作の中で、今回の映画が一番つまらないのはまず間違いない。料理を作って食べるのは楽しくても、汚れた皿を片づけるのは面白くない。『マトリックス・レボリューションズ』のつまらなさは、つまりそれと同じことだと思う。観客はシリーズ1,2作に匹敵する「メイン料理」がもう1皿登場することを期待しているのに、今回の映画で観客の前に出されるのは食後のデザートとコーヒー程度のボリュームしかない。あとはひたすらテーブルの後かたづけと皿洗いが待っているだけだ。

 僕は前作『マトリックス・リローデッド』の段階で、この映画の世界観がキリスト教的なものというより、その異端であるグノーシス派の世界観に近いと考えた。しかし今回の映画では、それが再びキリスト教的な救済劇に引き戻されているように思う。前作で主人公ネオが感じた「迷い」は、結局のところ異端思想の誘惑でしかなかったらしい。最後の最後に主人公は正統派の世界に戻る。彼は人類の救世主として世界を滅ぼそうとする悪と戦い、それに打ち勝って人類に平和をもたらす。世界にはびこる「悪」を我が身にすべて引き受けることで、彼は人間だけでなく世界全体を浄化するのだ。こりゃ〜キリストによる贖罪の死の焼き直しですなぁ。もちろんそこに、選ばれた者が光の世界に回収されるというグノーシス的な味付けはあるわけだけれど……。

 まぁこうしたストーリー上の整合性や結論は、『マトリックス』シリーズにおいて常に二の次の事柄だと思う。『マトリックス』シリーズが世界中で大受けしたのは、作品の世界観やミステリーの謎解きより、まずは斬新で圧倒的な迫力を持つアクション描写にあったからだ。『マトリックス』の後でそれに影響された作品が数多く作られたが、それは常に「アクション描写」を模倣するものであって、『マトリックス』の「世界観」に影響を受けたものなど皆無だった。しかし今回の映画では、肝心要の「アクション描写」がだいぶ物足りない。ザイオンがセンティネルの大群に攻撃されるシーンは面白いが、このシーンにネオをはじめとする主人公3人組は立ち会わないのは構成上の大きな欠陥だろう。我らが主人公はこの間、マトリックスの中に作られた無人駅をうろついたり、ザイオンに向かう長いトンネルをホバークラフトで飛び回ったりしているだけなのだ。

 結局この映画は作り手が「シリーズ全体で作り上げる世界の整合性」を優先した結果、観客が期待する「アクション描写」が最後の最後になって尻すぼみになってしまったように思えてならない。1作目が妙にアカデミックな受けかたをしてしまった毒が、こんなところで全身に回ってきてしまったのだろうか。ちょっと残念。

(原題:The Matrix Revolutions)

11月5日公開 丸の内ルーブル、丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|2時間9分|アメリカ)
ホームページ:
http://whatisthematrix.warnerbros.com/japan/

DVD:マトリックス・レボリューションズ
ビデオ:The Matrix Revolutions
サントラCD:マトリックス・レボリューションズ
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