リーグ・オブ・レジェンド
時空を超えた戦い

2003/10/11 日比谷スカラ座1
19世紀末に誕生した冒険小説のヒーローたちが大集合。
顔ぶれはにぎやかだが話はひどく退屈だ。by K. Hattori


 19世紀後半に書かれた怪奇小説や冒険小説の主人公たちが一堂に集まり、世界戦争を引き起こそうとする武器商人と戦うアクション・アドベンチャー映画。登場するヒーローたちは、子供時代に古典的な怪奇小説や冒険小説を読みふけっていた人たちにとっては馴染みの人たちばかりだ。19世紀末のロンドンにいきなり戦車が現れ、銀行を襲撃するというオープニングは観客の度肝を抜くが、それ以降がどうもだめ。

 製作総指揮と主演を兼ねるショーン・コネリーが演じているのは、H・R・ハガードの小説「ソロモン王の宝窟」の主人公アラン・クォーターメイン。彼とチームを組むのは、ジュール・ヴェルヌの「海底二万マイル」のネモ船長、H・G・ウェルズの「透明人間」に登場する薬を飲んだというコソ泥スキナー、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」の女主人公ミナ・ハーカー、オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」の主人公、スティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」の主人公、そしてアメリカからはマーク・トウェインの「トム・ソーヤの冒険」の主人公がチームに飛び入り参加する。

 悪役ファントムの名前と装束は、ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」だろう。映画の最後にはファントムの正体が、別の超有名小説の悪役であることが暴露されるのだが、これをやるならその“超有名小説”の主人公もちゃんと出演させてほしかった。

 本来別々の物語に登場していたヒーローたちを、物語の垣根を越えて共演させるというアイデアは、日本で言えば山田風太郎の「魔界転生」みたいなもの。しかしこの映画の場合は、主人公同士が作品の垣根を越えて交流するアメリカン・コミックの発想だろう。この映画、原作はグラフィック・ノベルなのだ。100年以上前の小説から主人公を借りてくれば、キャラクターに著作権料を払わなくていいのだから安上がりかもしれない。しかし物語までが安っぽくなっているのは、まったく納得できないのだ。

 そもそもこの映画、いったいどんな観客を想定して作られているのかがわからない。物語に登場するヒーローたちを小説や映画で知っていた人にとって、この映画はまったく物足りない。それは小説や映画で描かれたヒーロー像とこの映画をつなぐエピソードが、まったく描かれていないからだ。例えばネモ船長はノーチラス号を嵐で失った後、どうやって船を再建したのか。ドラキュラが死んだ後、ミナはなぜ吸血鬼であり続けねばならなかったのか。彼女はいつドリアンに会っていたのか。トム・ソーヤはなぜアメリカの諜報機関に入ったのか。逆にこれらヒーローたちと初対面の人たちにとって、この映画はあまりにも説明不足すぎるはずだ。そしてどっちにしろ、この映画はキャラクターの造形がどれも魅力的でないし、展開するドラマも浅すぎるように思う。アクション満載の映画だが、ドラマなきアクションに面白みはない。

(原題:The league of extraordinary gentlemen)

10月11日公開 日比谷スカラ座1他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(2003年|1時間50分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.foxjapan.com/movies/league/

DVD:リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
サントラCD:リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
ノベライズ:リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
原作洋書:The league of extraordinary gentlemen
ノベライズ洋書:The league of extraordinary gentlemen
関連洋書:The Unofficial Companion to the League of Extraordinary Gentlemen
関連DVD:スティーヴン・ノリントン監督
関連DVD:ショーン・コネリー
関連DVD:スチュアート・タウンゼント
関連DVD:ペータ・ウィルソン
関連DVD:ジェイソン・フレミング
関連書籍:ソロモン王の宝窟
関連書籍:ドリアン・グレイの肖像
関連書籍:海底二万マイル (2)
関連書籍:ジキル博士とハイド氏
関連書籍:ドラキュラ
関連書籍:透明人間
関連書籍:トム・ソーヤの冒険

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