コール

2003/10/03 映画美学校第1試写室
誘拐と身代金受け渡し方法のアイデアがユニークだが、
見せ方にはもう少し工夫がほしかった。by K. Hattori

 グレッグ・アイルズのミステリー小説「24時間」を、『メッセージ・イン・ア・ボトル』『エンジェル・アイズ』のルイス・マンドーキ監督が映画化。3人組グループによる子供の誘拐事件。犯人たちは両親に高額の身代金を要求して、まんまと大金をせしめることに成功している。しかも4回も連続して……。身代金目的の誘拐は成功率が低いくせに犯人の逮捕率は高く、捕まったときの刑も重いものだ。営利目的の犯罪の中で、もっとも割の合わないのが誘拐であることは常識。にも関わらず、犯人たちはいかなる方法でその犯罪を成功させてきたのか。映画は犯人グループが手がけた5件目の誘拐を通して、水も漏らさぬ完全犯罪が少しずつ崩壊していく様子を描いている。主演はシャーリズ・セロンとケヴィン・ベーコン。誘拐される子供役で、『アイ・アム・サム』のダコタ・ファニングが出演している。

 ジョー・ヒッキーをリーダーとする3人組の誘拐グループは、裕福な3人家族に目星を付けると子供を誘拐して、夫婦も見張りを付けて別々に引き離してしまう。ジョーたち誘拐グループは互いに携帯電話で連絡を取り合うが、被害者たちは互いに連絡が取れない状態だ。こうして被害者は常に自分以外のふたりを人質に取られる形となる。こうなるともう逃げ出すことも警察に通報することもできないまま、ジョーの要求するままに金を用意しなければならなくなるのだ。所要時間はわずか24時間。だが新たな犠牲者となったジェニングス家は、これまでとは勝手が違った。娘のアビーには喘息の持病があり、発作を起こした際に適切な治療をしないと3分半で窒息死してしまうのだ。犯人はそれを知らないままアビーを誘拐。母親のカレンは娘を助けるため、何としてでも犯人を出し抜こうとする。

 誘拐というのは人質を取るまでは簡単だが、警察に知られることなく身代金を受け取るのが非常に難しい。この映画に描かれた犯人たちの手口は、そうした誘拐犯罪の弱点をクリアした巧妙なものだと思うが、いくつかの不確定要素が残っていて「完全犯罪」にはほど遠いようにも思う。ただし犯人グループがもう少し大人数だと、犯罪として成り立つような気もするけれど……。そんなこともあってか、この映画は犯人グループの「巧妙な犯罪」を描いた前半部分が少し弱い。しかし誘拐した子供が喘息だったという計画の小さなほころびから、犯人側の優位性が揺らぎ、被害者側反撃のきっかけが生まれる。物語が本格的に転がり始めるのはこれからだ。

 せめて映画の中盤まで犯人グループの人数を伏せておくと、被害者側が犯人に服従せざるを得なくなる序盤に説得力が増すだろう。また映画後半にある「犯人の本当の目的」は余計だったようにも思うし、この目的を出すなら最後のスペクタクルは不要だとも思った。ただし誘拐自体のアイデアは面白いので、ミステリー映画好きは一見の価値ありだと思う。

(原題:Trapped)

12月20日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
問い合わせ:リベロ、ギャガ・コミュニケーションズ宣伝サウスグループ
(2002年|1時間46分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.call-movie.jp/

DVD:コール
サントラCD:コール Trapped
原作:24時間(グレッグ・アイルズ)
原作洋書:24 Hours (Greg Iles) (2)
関連DVD:ルイス・マンドーキ監督
関連DVD:シャーリズ・セロン
関連DVD:ケヴィン・ベーコン
関連DVD:ダコタ・ファニング
関連DVD:スチュアート・タウンゼント
関連DVD:コートニー・ラヴ

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