山猫は眠らない2
─狙撃手の掟─

2003/09/10 ソニーピクチャーズ試写室
トム・ベレンジャー主演のアクション映画『山猫は眠らない』の続編。
前作のマニアックさは影を潜めて普通の映画になった。by K. Hattori

 トム・ベレンジャーとビリー・ゼイン主演のサスペンス・アクション映画『山猫は眠らない』の続編だが、なんと前作から丸々10年もたって作られたパート2だ。今回はトム・ベレンジャー演じる海兵隊のナンバーワン狙撃手トーマス・ベケットのキャラクターだけを残して、他のスタッフやキャストはほぼ総入れ替え。前作では普通の映画ではあまり描かれてこなかった狙撃手と観測手のパートナー関係が大きなテーマになっていたが、今回はそのあたりの描写を比較的あっさりと流している。狙撃手であるベケットと新たにコンビを組んだ観測手がぴったり寄り添って狙撃をするシーンは一瞬で終わり、あとは互いにひとりの戦闘のプロとして、それぞれの信念に従った戦いをすることになる。

 軍隊を退いて慣れない仕事を転々としているベケットのもとに、軍情報部とCIAの男がひとつの暗殺指令を持ってくる。ターゲットはバルカン半島で新たな独裁者を目指す将軍だ。観測手としてコンビを組む相手は死刑囚のジェイク・コール。彼はこの仕事が成功すれば自由の身になることが約束されていた。ふたりは現地の協力者の手引きで首尾よく将軍の暗殺に成功するが、現場から脱出する途中でコールが捕えられてしまう。何とかして彼を助け出そうとするベケット。だがコールには、ベケットの知らされていない秘密の指令が与えられていたのだ……。

 狙撃作戦をマニアックな細部描写で再現した前作は、映画作品としてのバランスが著しく偏っているにもかかわらず、その偏り自体が映画の魅力になっていたと思う。今回はマニアックな描写もあり、人間ドラマもありで、作品としてのバランスはいいのだが、その分普通の映画になってしまった。秘密作戦のため死刑囚がシャバに出されるという設定もマンガチックだし、登場人物が多い割には出演俳優の層の薄くてドラマが平板に見えてしまう。スコープを覗くベケットの目がかすむという描写や、なぜコールが死刑判決を受ける羽目になったのかという謎が、映画の後半で生きてこない。映画後半でベケットやコールの同伴者となる男についても、善良なインテリのステレオタイプにしか見えなかった。平和主義者である彼が、ベケットたちの戦いぶりを見てどう変わっていくのかに、もっと焦点を当てても面白かっただろう。

 前作は「神は細部に宿る」を文字通り証明したような映画だが、今回は細部の詰めが甘くて普通のB級アクション映画になってしまったように思う。「なるほど、そうなってたのか!」というトリビアが、今回の映画にはあまりないのは残念だ。作戦の司令部が現地とどのように連絡を取り合っているのかとか、CIAと現地協力者の利害関係はどうなっているのかなど、細かく描けば面白くなりそうな要素はまだあるのに。二人一組での狙撃シーンも最初の将軍暗殺だけでなく、映画のクライマックス部分にもうひとつあるとよかったと思う。

(原題:SNIPER 2)

10月4日公開予定 新宿ピカデリー4
10月11日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(2002年|1時間30分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/sniper2/

DVD:山猫は眠らない2
前作DVD:山猫は眠らない
輸入ビデオ:Sniper 2
関連DVD:クレイグ・R・バクスレー監督
関連DVD:トム・ベレンジャー
関連DVD:ボキーム・ウッドバイン

ホームページ

ホームページへ