踊る大捜査線 THE MOVIE 2
レインボーブリッジを封鎖せよ!

2003/08/23 ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ(7)
大ヒット作の続編はスケール感も増していて大ヒットにも納得。
ただし映画としてはツメの甘いところも目立つ。by K. Hattori

 5年前の大ヒット作『踊る大捜査線 THE MOVIE/湾岸署史上最悪の3日間!』に続く、劇場版『踊る大捜査線』の第2弾。今回も脚本の君塚良一と監督の本広克行などのメインスタッフと、織田裕二・柳葉敏郎・深津絵里・水野美紀・いかりや長介などのメインキャストはそのままで、いつもと同じ『踊る大捜査線』ワールドが描かれる。こうした人気シリーズの場合、「いつもと同じ顔ぶれ」を揃えるだけで観客の欲求の半分は満たされるものだ。しかしこれは、同じ顔が揃わなければ観客はそれだけで不満を感じるということの裏返しでもある。忙しいタレントのスケジュールを調整して、いつもの顔を揃えてきたプロデューサーは偉い。

 前回の映画は2時間を切っていたのに、今回の映画は2時間18分という長丁場。相も変らぬ大ネタ小ネタのオンパレードでダレる部分は感じなかったが、ドラマの中心になる殺人事件そのものは中身がないスカスカ状態。犯人グループのチンケさに比べて、警察側が物々しすぎるというギャップが、映画のバランスを崩しているようにも思う。犯人グループにもう少し凄味が感じられると、映画全体にどっしりとした安定感が生まれただろう。このシリーズの売りが、警察内部の官僚主義やサラリーマン化した警察組織の戯画化にあることは承知しているが、今回の映画ではそればかりが異様に肥大化して、刑事ドラマの本筋である犯人探しのミステリーが弱くなっているように思った。

 今回の映画では「組織と個人」というのが大きなテーマになっている。組織の中で「自分の仕事」が見つからない青島刑事の苛立ちは、会社組織の中で「私の仕事」が見つからずにいるサラリーマンやOLの苛立ちを投影したものだ。今回の犯人グループの設定も、「組織と個人」というテーマと強く結びついている。「組織の中の個人」と「組織から離れた個人」のどちらが強いのか? 犯人グループは組織で捜査に当たる警察をせせら笑う。互いの利害が複雑に絡み合う官僚機構である警察は、リーダーなしに自由自在に動き回る犯人グループの尻尾をなかなかつかむことができない。新任の女性本部長が振りかざす「組織の論理」に、末端の捜査員たちは疲弊していくばかりだ。だがそんな組織にも、組織であるがゆえの強みがある。ひとりでは出来ないことが、皆で力を合わせれば可能になるのだ……と、脚本はそんなことを言っておるわけです。

 ところがこの映画、サービスのために散りばめられている様々な小ネタにまぎれて、この「組織と個人」というテーマが埋没してしまっているようにも思う。サービス精神旺盛な脚本を映像化することに夢中になり、監督自身がテーマの本筋を見失ってしまっているような気がしてならない。面白い映画でヒットするのも当然だとは思うけれど、映画のデキとしては前作よりランクが下だと思う。『砂の器』も『天国と地獄』ほどのキレはない。

7月19日公開 日比谷スカラ座1他・全国東宝洋画系
配給:東宝
(2003年|2時間18分|日本)
ホームページ:
http://www.odoru.com/

DVD:踊る大捜査線 THE MOVIE 2/レインボーブリッジを封鎖せよ!
サントラCD:踊る大捜査線 THE MOVIE 2/レインボーブリッジを封鎖せよ!
主題歌CD:Love Somebody[CINEMA VersionII](織田裕二)
関連書籍:踊る大捜査線 THE MOVIE 2/公式ガイド
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前作DVD:踊る大捜査線 THE MOVIE
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