レボリューション6

2003/07/17 ソニー・ピクチャーズ試写室
15年前の爆弾が破裂して元アナーキストたちは大慌て。
ベルリンの過去と現在を描くコメディドラマ。by K. Hattori

 町をど真ん中で東西に仕切る壁が崩壊する前の1980年代、ベルリンの町は建物を不法占拠する、パンクファッションの若者たちであふれかえっていた。だが1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊し、1年とたたずに東西ドイツは統一。ベルリンはドイツの首都に返り咲き、町には平穏な日々が戻ってくる。それから10年以上たったある日、ベルリン市内の古い建物で突然爆弾が炸裂する。それは今から15年ほど前、ベルリンの怒れる若者だった6人組の若者たちが、悪乗りして作った手製爆弾だった。大人になったメンバーたちは現在それぞれに別の道を歩んでいるが、この事件をきっかけに再び集まることになる。警察の押収品倉庫にある「犯行声明フィルム」を、何とかして奪い返すために……。

 大人になって別々の道を歩いているかつての仲間が、ある事件をきっかけに自分たちの若者時代に引き戻されるという定番のお話。ただしここで中心テーマになっているのは、登場人物たちの現在と過去ではない。危険で不潔で閉塞感と怒りが充満していたけれど、それがたまらない魅力でもあった過去のベルリンと、ドイツの首都としてきれいに環境整備された現代のベルリンの対比。携帯電話もインターネットもなかった15年前の世界と、IT全盛時代となった現代の対比。この映画はこうした時代対比そのものが作品主題となっており、その中で主人公たちの過去と現在とが象徴的に語られことになる。

 青春回想ドラマの多くは、最後に「大人になっても俺たちはまだ仲間じゃないか」という結論に達してハッピーエンドになるのが常だが、この映画はそれよりもう少しほろ苦いエンディングへと導びかれていく。ベルリンという町が大きく変わるように、そこで暮らしている人の姿も大きく変わる。町からは何かが失われて、決して戻ってこない。時間を取り戻すことは永久にできないのだ。その象徴が、失われてしまった足のエピソードだろう。だが人は何かを手放して、何かを得る。それは失った過去の代替品ではない、かけがえのない何かだ。新しく手に入れた貴重な何かを象徴するのが、幼い子供たちのだ。子供を登場させることで、主人公たちは自分たちが否応なしに大人になってしまったことを悟る。何もかもが変わる。時計は逆戻りしない。昔の友情は戻らず、恋人との関係も戻らない。

 映画は中盤から終盤にかけて、「俺たちはまだ仲間じゃないか!」という期待されるハッピーエンドへの道を残しておく。主人公たちは新しい生活を捨てて不敵なアナーキストに逆戻りし、往年の鬼刑事は主人公たちをどこまでも追い詰める。だがこれは結局、思い出話に過ぎない。過去が戻ったかに見えたのは、ただの幻影なのだ。過去と向き合い、人はそこを乗り越える。6人の友情は「復活」したのではなく、この出来事を通じて新たに始まるのだ。ティムとホッテの止まった時計は、ここから動き始める。

(原題:Was tun, wenn's brennt?)

8月公開予定 シアター・イメージフォーラム、シネマメディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給協力:メディアボックス
(2002年|1時間41分|ドイツ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/revo6/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:レボリューション6
関連DVD:グレゴー・シュニッツラー監督
関連DVD:ティル・シュヴァイガー (2)
関連DVD:クラウス・ルヴィッシュ

ホームページ

ホームページへ