ザ・レース

2003/07/17 映画美学校第2試写室
アドベンチャーレースをモチーフにしたコメディ映画だが話が空回り。
アイデアがありすぎるというのも困ったものだ。by K. Hattori

 男女混成チームが一丸となって、オリエンテーリング、トレッキング、クライミング、ケイビング(洞窟)、MTB(マウンテンバイク)、カヌー、カヤック、ラフティング、乗馬などで数百キロを走破するアドベンチャーレース。「パリ・ダカールラリーの人力版」とも言われるこのスポーツは、欧米ではかなり人気と知名度があり、年々競技人口も増えているという。この過酷なレースをテーマにしたのが、この映画『ザ・レース』だ。

 ボスから命じられるまま仕事を請け負っては、いつも失敗ばかりしている間抜けな4人組の強盗団。彼らが新たに命じられた仕事は、ボスの愛人の浮気調査だった。ところが小さな行き違いから、4人はある人物の暗殺依頼を受けてしまう。依頼人は自分が雇った殺し屋と、お間抜け4人組を間違えたのだ。ターゲットはアドベンチャーレースの花形選手で、大富豪でもあるレオノール・ド・スゴンザック。レース中の事故に見せかけて彼女を殺すため、4人組は新たに雇われたチームメンバーと偽ってレースに参加することになる。だが間もなく自分の間違いに気づいた依頼人は、本来の暗殺チームと共にレース中のレオノールに襲い掛かってくるのだった……。

 映画に登場する競技は、ヨット、スカイダイビング、乗馬、カヌー、スノートレッキング、最後はオマケのケイビングなど。出演者たちは撮影に入るだいぶ前から、これらの競技がリアルに見えるようトレーニングを積んでいたという。映画の見どころがこれらの競技シーンであることは間違いないだろう。ただし映画全体の作りはコメディなので、競技シーンも手に汗握るスリルとサスペンスというわけではない。アドベンチャーレースはすべて人力が原則だと思うのだが、劇中にはエンジン付きのボートが登場する場面もある。殺し屋から逃れるための緊急避難だとしても、これはレースを棄権したことにならないのだろうか。電話もどこかで捨てないと、話としては辻褄が合わない。

 レース全体の見取り図を最初に観客に示し、大きな移動の中に小さなエピソードを盛り込んで行けば、Xスポーツの要素を取り入れたユニークなロードムービーとして見栄えのする作品になったと思う。ところが映画は行く先を見せないまま、大小のエピソードを乱雑に物語に放り込んでしまった。結局はどのエピソードも、どのキャラクターも消化不良なままだ。人物の配置などもすっきりと整理して物語を前に前に押し出し、うまく話が回らなくなったらスポーツ場面の迫力で押し切っていくぐらいの勢いがほしかった。

 監督のジャメル・ベンサラはこの映画が長編2本目の監督作。15歳の時にテレビで見たアドベンチャーレースに感銘を受け、今回は脚本執筆に4年、ロケの準備などに2年、撮影に半年も時間をかけたらしい。こうして時間をかけたことで、作り手の思い入ればかりが先行した作品になってしまったのかもしれない。

(原題:LE RAID)

9月27日公開予定 シネマメディアージュ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ USインディペンデントグループ
宣伝・問い合わせ:JMP
(2001年|1時間34分|フランス)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

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