ローマの休日
製作50周年記念デジタル・ニューマスター版

2003/07/04 メディアボックス試写室
ウィリアム・ワイラー監督の名作がデジタル・リマスターでリバイバル公開。
往年の名画が大きなスクリーンで観られる幸福。by K. Hattori

 1953年に製作されたオードリー・ヘップバーンのハリウッド・デビュー作を、製作50年を記念してデジタル・リマスターしたもの。傷や色調の修復がメインだが、オープニングタイトルに脚本家フランク・ダラボンの名前がクレジットされるなど、細かな変更もなされているようだ。『ローマの休日』は古典的名作と言われながら長らくDVD化されていなかったのだが、パラマウントはこの修復作業が終わるのを待っていたらしい。アメリカでは既に、この修復版がDVD発売されている。

 ヨーロッパ某国の若い王女が、毎日分刻みで繰り返される厳しく退屈な公務に嫌気が差し、ローマ滞在中に宿泊先となっている大使館を抜け出す。そこで出会ったのが、グレゴリー・ペック演じる新聞記者。最初は王女と気づかないまま冒険好きのお転婆娘を自分の部屋に泊めた記者は、やがてこの若い女が病気で公務を休むと発表された某国王女であることを知る。これは大スクープだ。彼女に気づかれぬよう、親友のカメラマンと協力して王女の「ローマの休日」を密着取材し始めた記者だったが、やがて王女と記者は恋に落ちてしまう。ふたりは互いの身分を明かさぬまま別れる時が来るのだが……。

 アカデミー脚本賞を受賞したシナリオはやはり見事。マラマウントのロゴが消えるとすぐにニュース映像(パラマウント・ニュース)になり、アン王女のヨーロッパ歴訪の様子が映し出される。優雅に手を振るアン王女だが、その後大使館でのパーティ場面では彼女がスカートの中で靴を脱いでしまう普通の女の子であることを観客に示し、その夜に寝室で泣きわめくシーンに自然につないでいく。この導入部だけで、誰もがアン王女の激務に同情し、そこから逃れたいと願う彼女に感情移入する。

 主演女優選びには二転三転したらしいが、この映画はやはりオードリー・ヘップバーンの魅力と一体になって今に残っている作品だと思う。クローズアップで表情を長めに撮っているシーンが多いのだが、表情の変化だけでひとつの芝居を成り立たせてしまうのはさすが。これは演技力の問題でもあるのだけれど、それ以前に彼女の表情に観客が引き込まれているから、その微細な表情の変化に観客が一喜一憂するという効果が生み出せるのだ。

 ヘップバーンという女優は『ローマの休日』で一躍世界のトップスターになり、長らくそのイメージから抜け出せなかった人だと思う。彼女はいつもヨーロッパの香りをまとったハリウッドスターだった。『麗しのサブリナ』『戦争と平和』『昼下がりの情事』『パリの恋人』など、初期の作品はすべてヨーロッパがらみ。こうして作られたイメージが、その後の彼女の役柄を限定していた面もあるのではないだろうか。デビュー作がその人のすべてを決定付けるという意味で、吉永小百合と『キューポラのある街』の関係に似ているかもしれない。オードリーはいつでもアン王女なのだ。

(原題:Roman Holiday)

夏公開予定 テアトルタイムズスクエア他・全国洋画系
配給:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
特別協力:東京テアトル、ユナイテッド・シネマ
宣伝協力:メディアボックス
(2003年|1時間58分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.roman-holiday.jp/

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DVD:ローマの休日
ビデオ:ローマの休日
対訳シナリオ:ローマの休日
ノベライズ:ローマの休日
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関連書籍:ローマの休日―ワイラーとヘプバーン(吉村英夫)
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