ウルトラマンコスモス
VS
ウルトラマンジャスティス
THE FINAL BATTLE

2003/07/03 松竹試写室
劇場版ウルトラマンコスモスの第3弾にして完結編となる作品。
ウルトラマンにとって最大の敵はウルトラマンだった。by K. Hattori

 劇場版ウルトラマンコスモスの3作目にして完結編となる本作は、「ウルトラマン対怪獣」という従来のパターンを崩し、ウルトラマン同士を戦わせるという新機軸。もともと「正義が悪をやっつける」という勧善懲悪を脱したところで成立していた「ウルトラマンコスモス」の世界だが、それを進化発展させていった先にあるのは「価値基準の違う正義と正義がぶつかり合う」「正論と正論が正面衝突する」という難しいテーマだった。だがこれが、我々の暮らす世界の現実でもある。映画は我々の世界で今この時に起きている現実を、「ウルトラマン対ウルトラマン」というフィクションに託しているだけなのだ。

 怪獣たちを宇宙に移住させる計画が着々と進む中、突然それを妨害するように現れたウルトラマンジャスティス。巨大ロボットを使って施設を破壊し、人類に向かって「35時間後に地球上の全生命体をリセットする」と絶滅宣言まで行う。いったいなぜ? じつは今から2千年後、人類は全宇宙の脅威になる危険な存在になる可能性がきわめて高い。宇宙の平和を守るためには、危険の芽はあらかじめ摘み取っておくのが得策。これが宇宙の秩序を守るウルトラマンジャスティスの「正義」なのだ。だがウルトラマンコスモスはこれに反対する。人間にはもっと別の可能性だってあるんじゃないのか?

 この映画がアメリカによる対イラク戦争という現実を反映していることは明らかだ。「将来的に危険があるかもしれないからイラクを滅ぼしてしまおう」というアメリカの正義を、日本も世界も支持してしまった現実……。「将来的な可能性によって今を否定する」という論法は、アメリカもウルトラマンジャスティスも変わらない。映画は最後までこのアメリカ型=ウルトラマンジャスティス型の「正義」を否定しない。こうした正義のあり方が存在する現実を認めながら、それとは違う正義について語ろうとする。「未来を信じろ!」「人間を信じろ!」「困難でもあきらめるな!」「信じれば夢はかなう!」。これが今回の映画のメッセージなのだ。

 今回はウルトラマンジャスティスに変身するジュリという宇宙人を、『あしたはきっと…』や『時の香り/リメンバー・ミー』の吹石一恵が演じている。彼女がからんできた暴走族たち(ちょっと年とりすぎ)をコテンパンにやっつけるシーンは、『マトリックス』のキャリー・アン・モスみたいでかっこいい!

 同時上映の『新世紀2003ウルトラマン伝説/THE KING'S JUBILEE』は、ウルトラマンキングの30万歳の誕生日に集まったウルトラマンや怪獣たちが、激しいダンスバトルを繰り広げるという賑やかな作品。前回のような名場面集があるわけでもなく、ただただダンスだけを見せられても面白味が少ない。このダンスユニット「ウルトラファンクジャム」が、普通の歌番組などに出たら面白いかもしれないけどね。

8月2日公開予定 シネ・リーブル池袋他・全国
配給:松竹
(2003年|1時間17分|日本)
ホームページ:
http://www.shochiku.co.jp/ultra/

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