バトル・ロワイアルII
鎮魂歌〈レクイエム〉

2003/06/21 丸の内東映
深作欣二監督の遺作となった青春群像アクション映画。
話はデタラメだが勢いがあって面白い。by K. Hattori

 公開前から過激な暴力描写が賛否を呼んだ『バトル・ロワイアル』の続編。原作は高見広春の小説「バトル・ロワイアル」だが、今回は原作と前作映画の世界観を借りて、まったくオリジナルの物語が展開する。舞台は前作から数年後の日本。バトル・ロワイアルを生き延びた七原秋也は同じようにBRを生き延びた仲間たちとテロ組織「ワイルドセブン」を作り、世界中の大人たちに宣戦を布告する。その手始めに行ったのが、新宿副都心の爆弾テロだった。孤島に立てこもる秋也たち対処するため、政府は「BRII」という新ゲームを考案。日本中から集められたオチコボレ中学生を島に送り込み、子供同士で殺し合いをさせようとする。その中にはかつて秋也に殺された教師キタノの娘、キタノシオリの姿もあった……。

 監督の深作欣二がクランクイン直後に亡くなってしまい、シリーズのプロデューサーであり脚本家でもある長男の深作健太が現場を引き継いでいる。映画のタイトルにある『鎮魂歌〈レクイエム〉』とは、映画の中で死んでいく子供たちへの鎮魂歌であると同時に、人生最後の映画としてこの作品に取り組んだ深作欣二への鎮魂の思いが込められている。大ベテラン深作欣二監督の長男とはいえ、まったくの新人監督に現場がゆだねられてしまったわけだが、完成した映画はそうした混乱を感じさせない力強いものに仕上がっていると思う。

 もちろん全盛期の深作欣二ならもっと粘っこくエネルギッシュに撮れたに違いないが、仮に深作監督がクランクアップまで現場にいたとしても、大病で体力の衰えた監督に往年のような力強さと勢いは求められないだろう。むしろ今回の映画では、深作欣二監督の去った現場を何とか切り抜けようとする現場スタッフとキャストたちの「サバイバル意識」が、映画の異様な迫力を生み出しているのではないだろうか。話の整合性や筋道のきれいさを吹き飛ばして、ひたすら前へ前へとつんのめりながら突進していく映画の勢い!

 正直に言えば、この映画は前作の面白さに遠く及ばない。柔和な弱者ゆえにゲームに生き残ってしまった七原秋也は熱く政治を語るテロリストのリーダーになり、前作の柔和さを失ってしまっている。「あの国」と露骨に名前を伏せて語られる「アメリカによる世界覇権の実態」を批判する言葉も、映画の内容とまるで噛み合うことなく空回りしているように思う。脚本構成上の疑問がいくつもあるし、映画後半には明らかに物語が失速しているドラマの空白地帯もある。

 しかしそれでも、この映画は面白い。竹内力演じる教師が「皆さん死にざまに個性がありません!」と批判しているが、じつはこうした「個性のない死」「死の匿名性」こそが、戦争の実態なのではないだろうか? 戦争の中で人はあらゆる属性を剥ぎ取られ、個人としての死を迎えることさえ許されない。この戦争批判は、結構鋭いと思う。

7月5日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
(2003年|2時間13分|日本)
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