トエンティマン・ブラザーズ

2003/03/03 映画美学校第2試写室
刑務所を根城に出張強盗を働く3人兄弟のチームワーク。
ガイ・ピアース主演のクライム・サスペンス。by K. Hattori

 兄弟3人組で強盗をしているトエンティマン・ブラザーズには、いつも完璧なアリバイがある。彼らがアジトにしているのは刑務所の中。犯行計画が立てられると、グルになっている悪徳警官と弁護士のフランクが犯行当日だけは刑務所から出してくれる。稼ぎは警察やフランクらと山分けだ。こんな調子で2年の間に12回もの犯行を繰り返しているのだ。ところが兄弟が刑務所にいる間に、フランクが長男ダイルの女房と深い仲になってしまう。フランクの言動からその裏切りを知った兄弟は、刑務所にいる限り彼の言いなりになるしかない。どんなやばそうな仕事でも、まず刑務所から出るためには引き受けざるを得ないのだ。かくして兄弟たちは、競馬場襲撃というリスキーな仕事に取りかかるハメになったのだが……。

 長男ダリルを演じるのは『メメント』のガイ・ピアース。女房キャロル役にはレイチェル・グリフィス。悪徳弁護士役はロバート・テイラー、次男マル役がダミアン・リチャードソン、末弟シャイン役にジョエル・エドガートンという配役。監督のスコット・ロバーツは脚本家出身で、本作が監督デビュー作だという。

 ストーリーそのものには少々もたつきが感じられるし、兄弟たちを刑務所から出し入れしてアリバイ工作するトリックなども、ちょっとわかりにくく感じた。犯罪映画としては、こうした仕掛け弱さが大いに気になるのだ。しかしそうした弱点を補ってこの映画を面白くしているのが、兄弟3人のキャラクターの魅力だ。冷静沈着で頭脳派の長男ダイル。精肉職人としても一流の腕を持ち、兄弟たちのまとめ役をしているマル。頭に血が上ると突発的にキレるシャインは、不幸な幼児体験からオッパイ・フェチ。何かと個性的なこの3人が、いざ強盗となると抜群のチームワークと度胸であっという間に仕事をやり遂げる。現場に絶対に証拠を残さず、一滴の血も流さない、強盗としては超一流のプロフェッショナルなのだ。夫を裏切るキャロルも面白いキャラクターだ。刑務所に面会室のガラスに、あるモノを使ってスマイルマークを描くシーンは強烈!

 この4人に比べると、フランク役のロバート・テイラーに少し見劣りがするのは残念。この役はもっと小柄の俳優を使って、小心者の小ズルさを全面に出した方がよかったと思う。そうすれば追いつめられた彼が思いがけない反撃をするシーンも意外性が出るし、映画の最後に再登場する場面では、性格の陰険さがさらに際立っただろう。

 ガイ・ピアースはこれまで、繊細なインテリ男を演じることが多かったように思う。心の傷を抱えたまま生きるといった役も多かった。ところが今回の映画は、銀行強盗団のタフなリーダー。無精ひげが顔の輪郭をシャープに引き立たせ、精悍なイメージになっている。この映画はガイ・ピアースの俳優としての幅を感じさせてくれる。個人的には次男役のダミアン・リチャードソンがお気に入り。

(原題:THE HARD WORD)

2003年初夏公開予定 銀座シネパトス
配給:アット・エンタテインメント 配給協力・宣伝:LIBERO
(2002年|1時間39分|オーストラリア)
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