ミー・ウィズアウト・ユー

2003/02/17 東宝第1試写室
幼い頃から姉妹のように育ったマリーナとホリーの物語。
辛辣なシーンも多いが最後はハッピーエンド。by K. Hattori

 漫画家の萩尾望都に「半神」という作品がある。シャム双生児として生まれた姉妹の物語だ。この映画『ミー・ウィズアウト・ユー』の主人公たちも、周囲から「シャム双生児」と呼ばれている。別に体の一部がくっついているわけではない。隣同士の家に生まれたマリーナとホリーは、幼い頃から本当の姉妹のように育った幼馴染みの親友同士。ふたりは互いの部屋で遊び、一緒にイタズラをし、同じ日に処女を喪失し、同じ学校に進学し、同じ人を好きになる。互いを必要とし、日に何度も顔を合わせ、ことあるごとに電話で連絡を取り合いながら、やがてふたりの心の中に芽生えてくるのは相手に対する憎悪。相手と離れて自由になりたい。ひとりきりで生きていきたい。でもそれができない。ひとりになるのは恐い。ひとりになるのは寂しすぎる。「半神」の主人公がそうであったように、この映画の主人公たちも固く結びついた互いの絆に対して、愛憎入り交じった気持ちを持っている。

 物語は1970年代から現代までの20数年を描いている。流行の音楽やファッション、社会思想、時代の空気感のようなものが、巧みにドラマに盛り込まれているのも見どころ。監督のサンドラ・ゴールドバッカーは1960年生まれとのことだが、主人公のマリーナとホリーはそれより少し下の世代に設定されているようだ。演じているのは『スカートの翼広げて』に出演していたアンナ・フリエルと、『ハロウィンH20』に出演しているミシェル・ウィリアムズ。ふたりは大人へと背伸びを始めた10代の少女から、子持ちの30歳代までを演じている。

 テーマになっているのは「女同士の友情」みたいなものだけれど、何しろこの映画の主人公たちは子どもの頃から姉妹のように育った「シャム双生児」だから、互いのいいところだけでなく、嫌なところもたくさん知っている。そしてふたりが成長してからは、その嫌なところばかりがクローズアップされてくるのだ。特にマリーナの性格が相当に強烈だ。兄のナットとホリーが好きあっていることを察知すると、何が何でもふたりの間を裂こうと画策し、ホリーがナットを諦めて他の男性と交際し始めると、あっという間にそれをかっさらって自分が結婚してしまう。ホリーとの関係において、絶対に自分がイニシアチブを取りたいという支配意識の強さ。しかもそれが無意識に行なわれている。ホリーはマリーナと一緒にいると、常に自分が負けてしまうという引け目を感じざるを得ない。でも彼女にさほどの悪意がないことを知っているので、彼女との関係に距離を置いて離れてしまうこともできない。

 映画はこうした心理的癒着関係を描きながら、物語のもう一方の軸にホリーとナットの恋の行方をからませているのがミソだ。 最後のパーティ場面で登場人物の関係が一気に煮詰まっていくシーンは、まるでルノワールの『ゲームの規則』。でも最後はハッピーエンド。

(原題:ME WITHOUT YOU)

2003年陽春公開予定 シャンテシネ
配給・宣伝:アルシネテラン
(2001年|1時間40分|イギリス)
ホームページ:
http://www.alcine-terran.com/data/mwy/mewithoutyou.html

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DVD:ミー・ウィズアウト・ユー
サントラCD:ミー・ウィズアウト・ユー
サントラCD:Me Without You
関連DVD:サンドラ・ゴールドバッカー
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