クローサー

2003/02/10 SPE試写室
スー・チー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モク主演の女流活劇映画。
アクションシーンのアイデアに脱帽してしまう。by K. Hattori

 『グリーン・デスティニー』の成功に気をよくしたコロンビア映画が、『トランスポーター』のコーリー・ユン監督に撮らせたレディース・アクション映画。主演は『トランスポーター』にも出演しているスー・チー、『少林サッカー』のヴィッキー・チャオ、『食神』のカレン・モク。メインビジュアルだけ見ると香港版『チャーリーズ・エンジェル』のような印象も受けるのだが、この3人のうち、スー・チーとヴィッキーは金次第でいかなる暗殺も請け負うプロの殺し屋「電脳天使」で、カレンはそれを追う刑事という設定。つまり完全な敵と味方なのだ。もちろん最後には両者が手を取り合って、共通の敵と戦うという展開にはなるのだけれど……。

 自作自演のハッキング騒動を起こし、コンピュータ・セキュリティ会社の社長を暗殺することに成功した「電脳天使」。その正体はリンとクワンの美人姉妹だ。彼女たちは父親が残した世界規模の監視ネット「ワールド・パノラマ・システム」を使って、あらゆる警備網をかいくぐることができるのだ。今回の社長暗殺を依頼したのは、会社乗っ取りを企む社長の実弟。だが彼が次に狙ったのは電脳天使の口封じだった。新たな暗殺指令につられて、危険な罠におびき寄せられるクワン。彼女を助けるため現場に向かうリン。ただならぬ気配を察して、社長殺しを捜査していた女性刑事コンも現地に向かう。

 正直言って、話はどうでもいいような気がする。物語にはアラがたくさんあるし、面白そうなアイデアがまったく生かされ切れていない場面も多い。例えば姉妹にとって最大の武器であるワールド・パノラマ・システムも、その開発によって両親が殺されたという血なまぐさい過去を持つわりには、姉妹が危機一髪の状況から抜け出すための便利な小道具で終ってしまっているような気がする。パノラマ・システムそのものをもっと物語の中央に持っていけば、話はずっとシンプルで力強いものになったような気がするのだ。

 映画の見せ場は物語ではなく、最初から最後までほとんど切れ目なく続くアクションシーンにある。映画冒頭の社長暗殺と逃亡シーン。デジカムを巡る姉妹のじゃれ合い。姉妹と刑事の邂逅。警察から逃げるクワンを支援しつつ、リンが殺し屋たちと戦うシーン。そして敵のアジトへの潜入へ。タイプの違う活劇場面が、次から次へと現れる面白さ。個人的には最後の大チャンバラが最高に気に入っている。なぜか日本刀なんだよね。対戦相手は倉田保昭。

 ガラスを破るシーンがほとんどCGになっているのは、安全とコストのためだろう。だがガラスの質感がいかにも作り事めいていて、「ここがCGでござい!」という感じになるのは白ける。いずれはすべてCGになるのだろうが、今は必要に応じてキャンディーグラスなどと使い分けることも必要ではあるまいか。まぁ映画の流れを妨げるほどの欠点ではないけどね。

(原題:夕陽天使 So Close)

2003年3月公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:UIP
(2002年|1時間51分|中国(香港)、アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/closer/

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