ビロウ

2003/01/08 映画美学校第1試写室
3人の遭難者を救助したアメリカ潜水艦に起きる不審な出来事。
戦争映画かと思ったら、最後はホラー映画でした。by K. Hattori

 第二次大戦中の大西洋。米国の潜水艦タイガー・シャークが、英国の救命ボートから3人の人間を救助した。そのうちのひとりはなんと女性。病院船がドイツのUボートに撃沈され、彼女らは辛くも生き残ったのだという。ところがこの救出劇の直後から、潜水艦内では次々に不審なことが起き始める。駆逐艦のソナーから息を潜める艦内で、突然鳴り始めるレコード。艦内に響く不気味なつぶやき声。潜水艦に女性は不吉だと言われている。その疫病神を乗せたことで、艦に呪いがかけられたとでも言うのか? 爆雷攻撃で満身創痍のタイガー・シャークは、やがて洋上のある一点目指して進み始める……。

 製作・脚本は『π』や『レクイエム・フォー・ドリーム』のダーレン・アロノフスキー。監督と共同脚本を『アライバル/侵略者』『ピッチブラック』のデヴィッド・トゥーヒーが担当。艦の指揮を執るブライス大尉役に『13デイズ』のブルース・グリーンウッド。艦に救助されるヒロイン、クレア役に『シックス・センス』『抹殺者』のオリヴィア・ウィリアムズ。その他にマシュー・デイヴィス、ホルト・マッキャラニー、スコット・フォーリー、ザック・ガリフィアナキス、ジェイソン・フレミングなどが出演しているが、ハリウッドで主役級の俳優は皆無というノースター映画になっている。なんとも地味な映画なのだが、その地味さが、大きな力に捕らえられていつまでも浮上することが出来ない潜水艦という話の暗さにぴったり合っているようにも思う。

 物語は二重底になっている。最初は潜水艦の中に敵への内通者がいるのではないかというスパイものの雰囲気。スパイがいるとしたら、それは救助された3人の中の誰かか? あるいは3人すべてが敵のスパイなのか? だがスパイと言えども、海中で息を潜める潜水艦内でわざと音を立て、自らの命まで危険にさらすようなことをするだろうか? 物語はやがて、航行中に死亡した艦長を巡る謎を軸に回り始める。なぜ艦長は死んだのか? その時、ブライス大尉らはいったい何をしていたのか? こうなると物語は殺人事件を巡るミステリーのような雰囲気になってくる。だが物語はそこからさらに別ジャンルへ……。

 複数のジャンルをまたいだ映画なのだが、個々のジャンル映画の語り口ではない新しい語り方を模索している内に、全体に中途半端なものになっているようにも感じる。戦時スパイ映画のスリルは感じられず、ミステリーとしても中途半端で、ホラー映画としても力不足。監督のトゥーヒーはきちんとした実力を持つ演出家だったはずなので、これは製作のアロノフスキーの持ち味だろうか。アロノフスキー本人が監督すれば、こうしたノンジャンル映画も彼流の個性でそれなりにまとまりのある映画になったのだろうか。

 話自体は面白く、潜水艦映画としては『K-19』よりは面白く観られた。まぁ比較の対象が問題だけど……。

(原題:BELOW)

2003年陽春公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2002年|1時間45分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.below.jp/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:ビロウ
サントラCD:ビロウ |Below
関連DVD:デヴィッド・トゥーヒー監督作
関連DVD:マシュー・デイヴィス出演作
関連DVD:ブルース・グリーンウッド出演作
関連DVD:オリヴィア・ウィリアムズ出演作

ホームページ

ホームページへ