ウォーク・トゥ・リメンバー

2002/12/19 GAGA試写室
ニコラス・スパークスの小説「奇跡を信じて」を映画化した青春ドラマ。
ヒロインを演じたマンディ・ムーアが素晴らしい。by K. Hattori

 映画『メッセージ・イン・ア・ボトル』の原作者ニコラス・スパークスの小説「奇跡を信じて」を、『ウェディング・プランナー』のアダム・シャンクマン監督が映画化した青春ラブストーリー。原作は1950年代の出来事を老人が回想するという形式になっているそうだが(僕は未読)、映画は舞台設定そのものを1990年代に置き換えている。

 母子家庭で育ったランドンと、牧師の一人娘ジェイミーは幼馴染み。だがランドンは高校の不良グループとのバカ騒ぎで田舎暮らしの鬱屈を晴らし、ジェイミーはボランティア活動に打ち込むなど対照的な道を歩いている。ある時悪ふざけでクラスメートにケガをさせたランドンは、罰としてボランティア活動への参加を命じられる。ボランティアや演劇部への参加を通してランドンはジェイミーの手助けを借りるようになり、やがて彼は自分自身の生き方を問い直すようになる。ふたりは交際を始め、心の底からの愛と信頼関係で結ばれる。だがそんなふたりの仲を、運命は残酷に引き裂こうとしていた……。

 物語そのものは高校生の恋愛と難病ものをドッキングさせた、非常に古くさいメロドラマのようにも思える。1960年代生まれの原作者がわざわざこの物語を50年代の物語として書いたのも、この純愛ドラマがもはや現代では成立し得ないと考えたせいかもしれない。だがこの映画のプロデューサーたちはそうは考えなかった。些細なことで自分の歩むべき道を見失っている少年が、ひとつの出会いを通じて自分の行くべき道を再発見するというドラマは、どんな時代のどんな青春ドラマにも通じる普遍的ストーリーなのだ。

 だがこの映画でドラマを現代のものにしている最大の功労者は、ヒロインのジェイミーを演じたマンディ・ムーアだと思う。化粧気がなくいつも地味なセーターを着ている牧師の娘という役なのだが、彼女が劇中劇のミュージカルで歌うシーンが素晴らしく、この1シーンの存在で物語が我々の側に引き寄せられてくる。映画女優としてはまだ新人の彼女だが、なんでも既にアルバムを2枚出している売れっ子のティーン歌手だという。どうりで歌がうまいはずだ。それにしてもムーアの存在がなければ、この映画は古色蒼然とした青春メロドラマで終わっただろう。この映画の成功は、彼女に寄るところが大きい。

 恋愛ドラマではあるのだが、映画の中ではジェイミーの「信仰」が大きなテーマになっている。映画の中で2度に渡って引用されるパウロの有名な「愛の賛歌」(コリント一13:4-7)こそが、この物語の中心にあると言えるだろう。ジェイミーはここで語られているような「愛」を通して、ランドンの頑なな心を変えていく。ジェイミーは神を風に例え、ランドンはジェイミーの愛を風に例えることで、その向こう側にある「神」について語っている。少しひねってあるけれど、これは恋愛というより信仰のドラマなのだ。

(原題:A Walk To Remember)

2003年1月11日 日比谷みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2002年|1時間42分|アメリカ)
ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/wtr/

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DVD:ウォーク・トゥ・リメンバー
サントラCD:ウォーク・トゥ・リメンバー|輸入盤
原作:奇跡を信じて(ニコラス・スパークス)
原作洋書:A WALK TO REMEMBER
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