スパイチーム

2002/12/11 TCC試写室
レオン・ライ主演のスパイ・アクション映画だが、物語がわからん。
伏線も何もなしで物語がどんどん進む不可解さ。by K. Hattori

 異色の刑事ドラマ『OVER SUMMER 爆裂刑警』のウィルソン・イップ監督が、大スターのレオン・ライとスー・チー主演で描くスパイ・サスペンス映画……という売りなのだが、これがまったく意味不明の仕上がりで首を傾げるばかり。そもそも物語がわからない。アクションにも精彩がない。時折差し挟まれるギャグも上滑りしていて、クスリとも笑えない。なんでこうなっちゃったの?

 莫大な報酬と引き替えに、クライアントからいかなる要望にも応える凄腕のスパイたち。ライバル企業の機密情報だろうと、警備厳重な特殊金庫の中のお宝だろうと、マックのチームにとって盗み出せないものはない。ミッションの成功率は99%以上。今まで唯一の失敗は3年前の1件のみ。だがそれは、マックの恋人でもあったアップルの死という、大きな代償を払うものだった。その後チームは再編されたが、マックはアップルの死という痛手から抜け出すことができないでいた。そんな彼のもとに、製薬会社から新薬のサンプルを盗み出してほしいという依頼が入る……。

 この映画の困ったところは、物語にまったく辻褄が合わず、気まぐれにドラマが進行していくこと。凄腕のスパイだったマックが計画の失敗で恋人を失い、新しい仲間との絆の中でその傷を癒していくという流れがベースにあるのはわかる。だがそもそもなぜ計画が失敗したのか、なぜ恋人が死ななければならなかったのかという理由が定かでないのは、大きな落ち度ではないのか。チームのメンバーだったソトの裏切りという、映画冒頭でまったく説明されていなかった出来事が突然出てきても、観ているこちらは面食らうばかりだ。また3年前の任務失敗の際、バードは何をしていた? 新メンバーであるサムとミシェール(この役名は演じているサム・リーとミシェール・サラームからそのまま取ったもの。この安直さは、この登場人物が完全なゲスト扱いであることを示している)は、どういう経歴の持ち主で、マイクのことをどう考えてる? こうした人物の基本形が、この映画ではまったくお留守になっている。

 バードを演じたジョーダン・チャン(陳小春)は、最近日本での映画公開作がなかったので、久しぶりに顔が見られてちょっと嬉しい。ただし劇中での扱いはやはり中途半端だった。マックとバードとアップルの隠された三角関係をもっと全面に出せば、アップルの死という事件がこのふたりにとって大きなトラウマになっていることがよくわかるはずなのに。もっとも中途半端な扱いを受けているのはスー・チーも同じ。このヒロインの意味が、僕にはわからない。

 香港映画は脚本がないという話だけれど、この映画もそんな脚本なし映画のひとつなんだろうか。出たとこ勝負で次々にエピソードを接ぎ木している感じがした。わずか1時間半程度の映画で、これほど悩ましい映画も珍しい。

(原題:神偸次世代 SKYLINE CRUISERS)

2003年1月公開予定 キネカ大森
配給:ハピネット・ピクチャーズ 宣伝協力:FREEMAN
(2000年|1時間29分|香港)
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