オン・ザ・ライン

2002/09/09 映画美学校第2試写室
電車の中で出会ったあの女性にもう一度会いたい!
そんな気持ちから始まるラブ・コメディ。by K. Hattori

 ルックスも性格もいいので女性にもてないわけではないのだが、いざ自分が好きになった女性を前にすると、緊張して何も言えなくなってしまうケビン。学生時代には好きな女の子の前で緊張しすぎ、大勢の目の前で失神してしまったというエピソードさえあるのだ。友人たちはそんなケビンをバカにしながらも、彼がいつか本当の恋に巡り会って幸せになってくれればと願っている。そんなケビンが、新しい恋に巡り会った。相手は電車の中で偶然知り合った名前も知らない若い女性。下車駅までほんのわずかな時間を楽しく過ごし、互いに単なる好意以上の感情を持ったという確信がありながら、おくてのケビンは彼女の名前も電話番号も聞くことができないまま別れてしまう。仲間にもさんざんバカにされ、仕事でも自分の積極性のなさに嫌気がさしたケビンは、一念発起して思い切った行動に出た。電車の中で知り合った女の子を捜すため、手製のポスターを何十枚も作って街中に張り出したのだ。このポスターの件は新聞で取り上げられて大評判になるが、それによってケビンのもとには街中の孤独な女性(時には男性も)から電話が殺到するのだが……。

 主演はボーカル・グループ“イン・シンク”のランス・ベース。これが映画初主演だが、本作の製作総指揮も務める力の入れよう。監督は『レストラン』(僕は未見)のエリック・ブロス。主人公ケビンが電車の中で見初める若い女性アビーを、『デトロイト・ロック・シティ』や『A.I.』に出演していたというカナダ人女優エマニュエル・シューキーが演じている。ゲストスターとしてソウルシンガーのアル・グリーンや、ボン・ジョヴィのリッチー・サンボラが出演しているのも、音楽ファンには気になるところだと思う。

 男と女の出会いに限らず、人間の出会いというのは不思議なものだ。世界中に何十億人もいる人間の中から、ある時偶然誰かに出会い、そこで友情が育まれたり、恋が生まれたり、仕事が成立したりする。そうした出会いの不思議さと、そこで結ばれた人間関係の温かさが、この映画の基調になっている。主人公が電車の中の運命の女性を探すエピソードと平行して、主人公が会社の中で親しくしているメール室の老人や、一緒に仕事をすることになる黒人女性のエピソードが描かれているのだが、こうした関係性もまた出会いの面白さだろう。ケビンの友人がデート代行で知り合った新聞記者と親しくなるというエピソードにしても、まさに偶然の出会いが生み出した不思議に他ならない。

 偶然であったまま名も告げず別れてしまった人にもう一度会いたいという気持ちは、特殊なものでも何でもない。「子どもの頃によく遊んだあの人に会いたい」とか「旅先で親切にしてくれたあの人ともう一度」といった話と同じ、ごくありふれた感情だろう。すべての出会いは一瞬から始まる。その一瞬をどう生かしていくかが問題なのだ。

(原題:ON THE LINE)

2002年11月16日公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ(レイト)
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
(2001年|1時間29分|アメリカ)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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