完全犯罪クラブ

2002/09/05 ワーナー映画試写室
高校生たちが自らの優秀さを証明するために企んだ犯罪。
実在の事件をモデルにした少年犯罪のドラマ。by K. Hattori

 1924年にシカゴで起きたレオポルドとローブ事件を、現代流にアレンジした異色ミステリー映画。レオポルドとローブ事件は、ヒッチコックはじめ数人の監督が映画化した有名事件。18歳と19歳の大学生がニーチェの超人思想にかぶれ、完全犯罪を行なうことで自分たちの超越性を証明しようとしたらしい。今回の映画は超人性を証明するために行なわれた少年たちの犯罪というポイントだけを実在の事件から引用し、残りはかなり自由に物語を作っている。

 本作の特徴は事件そのものを物語から一段後退させ、サンドラ・ブロック演じる女性刑事キャシー・メイザーの心理的葛藤のドラマを前面に押し出したことかもしれない。少年たちの犯罪とキャシーのドラマはあまりうまくリンクしていないのだが、最後にキャシーの口から発せられるたったひとつの台詞で、平行して流れていたふたつの流れがひとつに合流していく。これが計算なのか、それとももっと早い段階でふたつの話を結びつけようとして結局失敗してしまったのかよくわからないのだが、おそらくは後者だろう。もともとこの映画の中心を流れるのは少年たちの犯罪であり、刑事の過去を巡る物語は脇を流れる小さなせせらぎだったはず。ところが少年たちの事件だけでは映画作品(映画商品と言い換えることもできる)として弱いため、少年たちを追いつめる刑事にスター俳優を持ってきた。その結果、本来は脇筋の小さな流れだったはずの物語が、本流である少年犯罪の物語と同格になってしまったのではないか。

 少年たちが考え出した完全犯罪の手口は面白い。しかし少年たちのアリバイや捜査の行く手を阻むトリックの提示方法が十分ではないため、小さな証拠を手がかりにトリックを少しずつ暴いていくスリルが味わえない。ミステリー映画としては、犯罪そのものの見せ方があまりにも淡泊すぎる。映画を観ている人が「これは難物だ」と納得できるだけの障壁を、物語の中にきちんと作っておいてほしかった。映画の冒頭に謎めいたシーンを作り、そこから物語が少し前に戻って……という構成も、この映画ではまったく効果を上げていない。

 監督は『運命の逆転』『ルームメイト』『絶対×絶命』など、サスペンス・ミステリーのジャンルで数々の作品を作っているベテラン、バーベット・シュローダー。この映画もエピソードの語り口はスムーズで、少年たちの葛藤にしろ、女刑事の苦悩にしろ、きちんと観客にわかるように作られている。しかしそれでも、この映画はやはり全体の構成がいびつで足腰が弱いように思うのだ。やはり少年たちの関係性に焦点をあてて、女刑事の過去や同僚刑事との関係については、あまり話を広げない方がよかったのではないだろうか。そこそこ面白い映画だけに、全体のバランスの悪さがどうにも気になってしまう。

(原題:Murder by Numbers)

2002年10月公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ワーナーブラザース
(2002年|2時間00分|アメリカ)

ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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