マーサの幸せレシピ

2002/08/29 メディアボックス試写室
独身の女性シェフのマーサが急に姪っ子と暮らすことになり……。
中盤からはラブコメになる。じつに楽しい映画。by K. Hattori

 誰もが才能を認めながらも少々偏屈なところがある女性シェフが、事故死した姉の子供を引き取って共同生活する中から、自分自身が見失っていた人生の幸せを見出していくというヒューマンドラマ。

 ヒロインのマーサはドイツのハンブルクにあるフランス料理店で厨房を預かる料理長。彼女の料理目当てに通ってくる常連客も多いのだが、料理に完璧さを求め、そのできばえに絶対の自信を持っていることから時折客とのトラブルも引き起こす。彼女のあまりにもパーフェクトな仕事ぶりは、他人の存在を受け付けないところがある。彼女は何事にも妥協しない。すべてが自分流に処理されないと我慢できない。しかしそんな彼女の生活に、親を失った姪っ子リナが飛び込んできた。それと前後して、店のオーナーは厨房の戦力アップのため、腕のいいイタリア人料理人マリオも雇い入れる。私生活も厨房も新たに登場した他人によって一変したことで、マーサの人生は大きく転換していく。

 監督は本作がデビュー作のサンドラ・ネットルベック。ヒロインのマーサを『悦楽晩餐会』のマルティナ・ゲディックが演じ、助っ人料理人マリオを『恋ごころ』のセルジュ・カステリットが演じている。映画の中ではヒロインが次々に素晴らしい料理を作りながら、それに一切口を付けないという演出がなされている。自宅でも食事をせず、店に出てからもまかないの食事に一切手をつけないマーサ。一体彼女がどこで生活に必要なカロリーを摂取しているのか心配になるほどだが、この「食べない」という単純な性格付けが、のちのち彼女が何を食べるかという関心となって観客の目を画面に釘付けにする。この映画の中では彼女が食事をとることが、そのまま心を開くきっかけになる。「一緒に食事をすればみんな仲良し」という使い古されたテーマを、マーサという主人公の行動を通して描いているわけだ。わかりやすすぎる展開。でも楽しい。

 突然の事故で母親を失いマーサのもとに転がり込んできたリナも、最初のうちはほとんど食事をしない。空腹なのに何も食べられない、気持ちの上でとても何かを食べる気になれないという彼女に、どうやって食事をさせるか。ここで登場するのが、お調子者のマリオが作った皿一杯のスパゲティ。トマトソースをからめたスパゲティにたっぷりのパルメザンチーズと香りのいいバジルのみじん切りをパラパラと振りかけると、これがばかに美味い。これはリナならずとも、おもわず手が出そうになります。料理店が舞台の映画では、どういうわけか厨房の「まかない食」が美味そうに見える。『シェフとギャルソン,リストランテの夜』ではメインのティンパーノより、最後に出てくるシンプルなオムレツの方が美味しそうだったしなぁ……。

 最後はハッピーエンドにニッコリ。フランス料理店が舞台の映画なのに、イタリア料理、しかもシンプルなスパゲティが食べたくなる映画でした。

(原題:Bella Martha)

2002年10月公開予定 テアトルタイムズスクエア
配給:UIP
(2001年|1時間45|ドイツ)

ホームページ:http://www.martha.jp/martha/index.html

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