サイン

2002/08/15 イマジカ第1試写室
『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督最新作。
モチーフはB級映画なのに演出は格調高い文芸調。by K. Hattori

 『シックス・センス』『アンブレイカブル』のM・ナイト・シャマラン監督最新作は、ヒッチコックの『鳥』を連想させるメル・ギブソン主演の超常現象スリラー。オープニングタイトルは文字だけを使ったタイポグラフィカルな処理になっていて、音楽もバーナード・ハーマン風。映画を観ながら「これは『鳥』だなぁ」と思っていたら、プレス資料にもやはりシャマラン監督が『鳥』を強く意識していたと書いてあって納得。

 この映画は公開前に内容が流出するのを極端に警戒し、アメリカでは事前の試写会もほとんど行なわれず、ノベライズ本も映画公開後まで発売されなかったという。もっともこうした事柄は話題作りという宣伝戦略の一環であり、『シックス・センス』で「ブルース・ウィリスはじつは○○なんだよね」とばらしてしまうことに匹敵する大きな秘密が、この映画に隠されているわけではない。映画を最後まで観れば「ああ、なるほどね」とは思うが、そこにあっと驚くどんでん返しや意外な種明かしを期待するとはぐらかされると思う。

 映画は突然出現したミステリーサークルから始まる。広大な畑の中に忽然と現れる円や線などの幾何学模様は、一説によるとUFOが何らかの目的で地上に残していく痕跡なのだという。(僕自身はごく一部が自然現象によるもので、残る大部分は人為的なイタズラだと考えているけどね。)映画ではこのミステリーサークルが、主人公グラハム・ヘスの家の前にある広大なトウモロコシ畑のど真ん中に突然出現する。最初はイタズラだと考えたグラハムだったが、じつは時を同じくして世界中で何百ものミステリーサークルが出現していたのだ。

 物語は主人公と家族の周辺だけで進行し、世界各地の様子はテレビやラジオというメディアを通して伝えられる構成になっている。人類史未曾有の脅威を大上段に描くのではなく、アメリカの片田舎に済む元牧師一家の姿を通して等身大で描いていく恐怖。なぜ事件が起きたのか。その意味や目的は何なのか。そうした「なぜ?」をすべて置き去りにして、現に起きている事件を起きているままに描いていく姿勢が、ヒッチコックの『鳥』に似ているのだ。事件は何の前触れもなく突然起きる。そしてそれは突然去っていく。

 概略だけを述べれば、これは過去に無数に作られたB級ジャンルムービーの派生種と言えるだろう。だがナイト・シャマラン監督はこれを「地球や人類の危機」として描かず、妻の事故死で信仰を見失った元牧師が信仰を取り戻すまでのドラマとして描く。父親が神に背を向けたことで精神的な支柱を見失っていた家族は、事件を通して再び神を見出し、家族の固い絆を取り戻す。

 それにしてもこの監督は、なぜいつもこんなB級映画風のモチーフを取り上げるのだろうか。普通に文芸映画を撮っても、水準以上の力量を発揮できる監督だと思うんだけどなぁ。

(原題:SIGNS)

2002年9月21日公開予定 日比谷スカラ座他・全国東宝洋画系
配給:ブエナビスタ 宣伝:メイジャー
(2002年|1時間47分|アメリカ)

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