スナイパー

2002/07/18 東映第1試写室
白昼の公園で銃器メーカーの女性副社長が狙撃されたわけは?
銃問題に一石を投じようとするB級アクション映画。by K. Hattori

 低予算のB級アクション映画だが、テーマは「アメリカ社会の銃問題」というゴリゴリの社会派。主演はウェズリー・スナイプスと『メン・イン・ブラック』『私が愛したギャングスター』のリンダ・フィオレンティーノ。映画の大半は、このふたりの掛け合い芝居で構成されている。ただしこのふたりが、直接顔を合わせて会話をする場面はついに最後まで出てこない。スナイプス演じるジョーという男は高性能の狙撃用ライフルを構え、フィオレンティーノ演じる銃器メーカーの副社長リバティ・ウォラスを公園のど真ん中に釘付けにする。ジョーは高倍率のスコープとビデオカメラ越しにリバティを監視し続けるが、彼女の側からはジョーの姿もその位置もまったく見当がつかない。

 事件はリバティが公園を横切ろうとしたときに起きた。突然携帯に電話をしてきたジョーという男は、高性能ライフルで彼女を狙っていることを告げる。リバティの胸には赤いレーザー光線の照射。これは誰かが遠距離から銃で彼女を狙っていることを意味する。彼女は男の命じるまま、高性能の爆弾がセットされているという近くのホットドッグスタンドに自分の身体を固定する。ジョーと名乗る男は、やがて電話越しにその身の上を語り始める。CIAの元秘密工作員だった彼のひとり娘が、学校で少年が起こした銃の乱射事件で殺されたのだという。その時使われた銃は、リバティの会社が作ったものだった。銃さえなければ娘は死なずに済んだのに……。ジョーは銃社会に復讐するため、銃器メーカー副社長であるリバティをターゲットに選んだのだ。だがこれが本当に復讐の役に立つのか? リバティにはその理由がまったくわからない。

 アメリカは憲法の修正第2条で『規律ある民兵は自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保蔵しまた携帯する権利はこれを侵してはならない』と定めている。アメリカで銃規制がまったく効果を上げないのは、根本にこうした憲法の規定があるからだ。だがこの映画は、憲法が認める「銃器保持の自由」に否を唱える。映画の原題『LIBERTY STANDS STILL』はジョーがヒロインに呼びかける台詞であると同時に、LIBERTY(自由)の名によって、多くの罪もない人々が日夜生命の安全を脅かされている現実を訴える。銃の必要性を主張する人々は、「不当な暴力に屈しないためにも、銃を所持する自由は認められねばならない」と言うだろう。だが白昼の公園のど真ん中で、どこの誰かわからない人間に銃で脅されて立ちすくんでしまう女性が、どうやって相手に銃で抵抗できるというのだろうか? 銃で自由が守れるなどナンセンスだ。

 映画は歯切れの悪い終りかたをする。たったひとりの反乱でアメリカの銃問題が解決するほど、銃問題は単純ではないのだ。映画の作り手たちも当然それがわかっていながら、それでもこの映画を作るべきだと考えたのだろう。

(原題:LIBERTY STANDS STILL)

2002年8月31日公開予定 新宿東映パラス3
配給:メディアスーツ、アースライズ 宣伝:スキップ
(2002年|1時間36分|アメリカ)

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