タイムマシン

2002/07/11 丸の内ピカデリー1
ガイ・ピアース主演でウェルズの古典的SF小説を再映画化。
監督サイモン・ウェルズは原作者の曾孫だとか。by K. Hattori

 H・G・ウェルズの古典的SF小説「タイムマシン」を、ウェルズの曾孫サイモン・ウェルズ監督が映画化したSFアドベンチャー。物語の舞台は19世紀末のニューヨーク。天才科学者アレクサンダー・ハーデゲンは、婚約者のエマを目の前で強盗に殺されたことから、「時間を逆戻りしてエマを助けたい」という思いに取りつかれる。それから4年。アレクサンダーはついにタイムマシンを完成させて、エマが死ぬ直前の世界に戻っていく。だが何をやっても、彼はエマの命を救うことができない。「過去をどうすれば変えられるのか?」という疑問に対する答えを、彼は未来に求めようとする。だが21世紀の世界でも彼はその答えを見つけられない。それどころか彼が見たのは、科学技術に溺れて地球そのものを破壊してしまう人類の姿だった。アレクサンダーはさらに時間を下って、80万年後の世界を訪れる。そこでは人類が地上で生活するイーロイ族と、地下で暮らすモーロック族の2系統に進化していた。

 ウェルズ監督はドリーム・ワークスのアニメ映画『プリンス・オブ・エジプト』の助監督だった人で、実写映画を監督するのは今回が初めてだという。誰もが知っている古典SFの映画化に、実質的にはこれが監督デビュー作となる新人を連れてきて、しかもそれが原作者の曾孫だというのだから、これはきっとすごくつまらない映画に違いないと最初から思っていた。ところがこの映画、期待に反して(?)それなりに面白い。特に映画の前半、19世紀のニューヨークを再現している部分は素晴らしかったと思う。時間を旅する際、タイムマシンの機上から見える風景のめまぐるしい変化にも目を見張る。

 ストーリーは主人公が80万年後の未来に旅するという基本的な流れが原作のままだが、そこに変更不可能な過去というエピソードや、初歩的なタイム・パラドックスのテーマを忍び込ませている。逆に原作から後退しているのは文明批評家でもあったウェルズの風刺性だろう。この映画に登場するイーロイ人とモーロック人の関係に、現代人の写し絵を見ることはできない。だが小説からタイムマシンによる時間旅行というアイデアだけを借りてくるという把握の仕方は、そのまま原作発表以降1世紀に渡って成長したタイムトラベルSFの流れそのものを象徴しているようにも思う。タイムトラベルSFに必要なのは風刺ではなく、時空間を自由自在に移動していくという行為と、その行為から派生する時間についてのさまざまな考察そのものにあるということだろう。イーロイ人もモーロック人も、どうでもいいだよ、そんなものは!

 主人公が80万年後の世界に行ってしまうと急に話が平板になってしまうのは、主人公の友人も恋人も家政婦もおらず、言葉も通じない場所に放り込まれて、彼の周辺から「人間関係」が消え去ってしまうからだろう。関係性を失った人間は、単に動き回る風景に過ぎない。

(原題:The Time Macine)

2002年7月20日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:レオ・エンタープライズ
(2002年|1時間36分|アメリカ)

ホームページ:http://www.timemachine-movie.jp/

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原作:タイムマシン(H.G.ウェルズ)
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