バルニーのちょっとした心配事

2002/07/11 東宝第1試写室
ファブリス・ルキーニがモテモテ男を演じるコメディ映画。
しょぼくれた中年がなぜかモテるのだ。by K. Hattori

 男女の三角関係はラブコメ映画の定番だが、時には四角関係の映画というのも登場する。それはたいてい、カップルの双方に浮気相手がいるという場合が多い。これは「ひとりの人間が同時にふたりの人間と恋愛関係になる」という意味で、三角関係のドラマと大差がない。本当の四角関係と言うならば、ひとりの人間が同時に3人と恋愛関係になるべきだろう。

 主人公のバルニーは、フランスのカレーからロンドンの会社に遠距離通勤している中年サラリーマン。彼には愛する妻リュシーと娘セシールの幸せな家庭があるが、ロンドンでは仕事の合間にイギリス人青年マークとしばしばベッドを共にし、若い娘マルゴと情事にふける日々を送っている。マークとマルゴはバルニーに家庭があることなど先刻承知。ただし家庭の外にいる恋人は、それぞれ自分だけだと思っている。ところが手紙の宛先をバルニーが間違えたことから、マークとマルゴはバルニーに自分以外の恋人がいると知って激怒。ふたりは揃って、バルニーの自宅に乗り込んでいくのだが……。

 バルニーを演じているのは、『百貨店大百科』や『ボーマルシェ/フィガロの誕生』のファブリス・ルキーニ。彼は卑劣な悪漢も演じられれば、お人好しのダメ男も演じられる俳優だけれど、演じる役には常にユーモアが漂う。この映画のバルニーという役を、ハンサムな二枚目俳優が演じたら嫌味で見ていられない。何しろ妻リュシーを演じるのはナタリー・バイ、恋人マルゴを演じるのがマリー・ジラン、マークを演じているのが『フル・モンティ』のヒューゴ・スピーアという美男美女揃いなのだ。三枚目のルキーニがどういうわけだかこの美男美女にモテモテというのは、それだけで不条理で不可解なのだが、それを何の言い訳もなくズケズケと押し通してしまうのがいい。ここに少しでも躊躇があると、映画は出だしから失速してしまうだろう。むしろこの無茶苦茶な前提があってこそ、映画中盤以降のドタバタ劇が生きてくる。

 (それにしても、バルニー氏のスタミナは凄いなぁ……。マークと昼休みにベッドインして、その後マルゴと2連戦、帰宅してからも妻と抱き合ってます。これをマッチョタイプの俳優が演じず、ルキーニがあの細い身体でしらばっくれて演じているのが、何とも言えないおかしみを生み出しているのです。)

 映画は前半と後半に大きく別れる。前半はバルニーの家にマークとマルゴが「友人」として乗り込み、さらにリュシーの浮気相手まで登場する展開。映画後半では前半に登場した人物が全員オリエント急行に乗り込み、共にベニスまで旅をする。映画前半はひとつの大きな舞台を設定して、そこに登場人物全員をぶち込んでしまうという構成。映画後半は列車の個室や食堂や廊下といった細かく区切られた空間を使って、人物を数人ずつ出入りさせて芝居を組み立てているのだ。なかなか芸が細かい。楽しい映画でした。

(原題:Barnie et ses petites contrarietes)

2002年初秋公開予定 シャンテ・シネ
配給:アルシネテラン
(2000年|1時間25分|フランス)

ホームページ:http://www.alcine-terran.com/

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