RED HARP BLUES

2002/07/08 KSS試写室
伝説の赤いブルースハープを求めてる青年の奮闘記。
青春映画としてはまずまずの好印象。by K. Hattori

 舞台は大阪・天王寺。ブルース大好き青年の陽児は、ブルースの生演奏が売りの店でバイトしながら、仲間と組んだブルース・バンドでいつかスターになろうと夢見ている。バンドの人気は今ひとつだけれど、何の根拠もなくでっかい夢が見られるのが青春の特権だ。ある日陽児は街で偶然、伝説の赤いブルースハープを持つ「天王寺のオッチャン」の噂を耳にする。最高の音を出すというその赤いハープはさまざまな逸話を持っており、ブルース好きなら1度や2度はその噂を聞いたことがあるものだ。もし陽児がそのハープを手に入れることができれば、「伝説のハープ」で演奏するブルース・バンドの存在はセンセーションとなるに違いない。赤いハープを求めて天王寺界隈を歩き回った陽児は、とうとうそのハープを持つというオッチャンを探し当てるのだが……。

 監督はこれがデビュー作となる高橋正弥。低予算の日本映画を連作するガリンペイロ・レーベルの第6弾作品だ。主人公の陽児を演じるのは鳥羽潤。伝説のハープを持つオッチャンを演じるのはミッキー・カーチス。主人公の陽児はオッチャンとの関わりの中で、仲間とはぐれ、恋人とも離れ、仕事も失い、たったひとりで自分自身と向き合うことを強いられる。自分は「ブルースで日本一になる」という夢を持っていた。一見その夢は、ものすごく具体的な夢のようにも思える。だがそれはプロデビューして世の中の脚光を浴びたいという意味なのか。それとも恋人が夢を持っているから自分も、という対抗意識だったのか。あるいは仲間とバンド活動を続けていくためのモチベーションのひとつに過ぎなかったのか……。一緒に同じ夢を見ていたはずの人々がひとりずつ去っていく中で、陽児は「自分の夢」をもう一度原点から見つめ直す。自分にとって、ブルースって何だったんだろう?

 映画の中では元憂歌団の木村充揮、ミッキー・カーチス、Bluem of Youthなどが演奏を披露しているのだが、それらに比べると主人公・陽児の演奏には熱がこもっていなくて見劣りするという欠点がある。ブルースマン志望の青年が、伝説のブルースマンに出会って音楽の神髄に触れという物語だとすると、これはかなり物足りないものだ。陽児がオッチャンと出会うことでどう変わったのかが、「演奏シーン」の中で表現し切れていないのは、音楽映画としては致命的な欠点と言わざるを得ない。すべてを失い打ちひしがれた陽児がハープで演奏するのが、音程もあやふやな童謡ではねぇ……。

 そうは言っても、この映画は1本の青春映画としてちゃんと「今の映画」になっている。豊かな今の時代には、何かを得ることは難しくない。むしろ自分に苦労せずに身につけたあらゆるものを、すべて捨て去ることこそが冒険なのだ。この物語では主人公が「すべてを失う」過程こそがドラマの中心。これは青春映画として、決して後ろ向きなものではないと思う。

2002年8月31日公開予定 テアトル池袋
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 
宣伝・問い合せ:オフィス シー・エー プランニング
(2001年|1時間40分|日本)

ホームページ:http://www.garinpeiro.com/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:RED HARP BLUES
関連CD:木村充揮
関連CD:Bluem of Youth
関連リンク:鳥羽潤
関連リンク:ミッキー・カーチス
関連リンク:大河内奈々子
関連リンク:尾藤桃子

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ