クラブ・バタフライ

2002/06/26 映画美学校第2試写室
夫婦の危機をスワッピングで乗り越えようとする夫婦の物語。
夫婦の倦怠をテーマにした韓国映画。by K. Hattori

 欧米に比べると離婚率の低かった日本も、最近は離婚するカップルがどんどん増えているらしい。離婚原因のトップは昔も今も「性格の不一致」だが、これは突き詰めると「性の不一致」が大半だという説がある。こうした俗説が本当か嘘かは知らない。どうせ誰もそんな調査を真面目に行ってはいないだろう。でもこうした俗説を「さもありなん」と思わせてしまう真実が、やはり夫婦生活の中には隠されているのではないだろうか。

 倦怠期を迎えた夫婦が、新しい刺激で自分たちを鼓舞しようとして、スワッピングの世界に迷い込んでいく物語だ。映画の中には2組の夫婦が登場する。夫婦の性生活が暗礁に乗り上げているものの、そこから抜け出すことができずにあえいでいるヒョクとキョンの夫婦。もう一方は、スワッピングによって常に夫婦生活を刺激的なものとして保ち、充実した性生活を営んでいるウとスクの夫婦。ヒョクとキョンは夫婦生活に何か新しい刺激が必要だと思いながらも、スワッピングなど変態のすることで、自分たちとはまったく無関係だと考えている。にっちもさっちも行かない親友夫妻の窮状を見かねたウとスクは、最後の選択肢として彼らをスワッピング・パーティに誘い出すのだが……。

 スワッピングを知ることで円満な夫婦生活を送る夫婦と、スワッピングを毛嫌いして夫婦生活が破綻しかけている夫婦を対比させながら物語が進んでいくのだが、この映画は何も「スワッピングでみんな幸せ!」とか、「スワッピングで夫婦の問題はすべて解決!」と結論づけているわけではない。映画の中にはスワッピングが原因で夫婦関係が破綻してしまった例も登場しており、スワッピングが夫婦問題解決の万能薬ではないことを示している。

 むしろこの映画が焦点を当てようとしているのは、結婚している夫婦なら誰もが多かれ少なかれ抱くであろう(あるいは抱くことになる)倦怠感そのものだ。これは夫婦だけでなく、恋人同士でも当てはまることかもしれない。パートナーを心から愛していても、そこに恋愛初期のような燃え上がる感情はもはや存在しない。共に生活しながら、共に同じベッドに寝そべりながら、それでもふたりの間に大きな溝を感じる一瞬。そうした心の隙間を肉体で埋めていけるのがセックスの効用なのだろうが、それさえなくなってしまえば夫婦関係や恋人同士の関係は風前の灯火になってしまう。心のつながりも肉体的なつながりもなくただ一緒に暮らしているだけなら、それは単なる共同生活者に過ぎないではないか。ヒョクとキョンの夫婦は、自分たちが夫婦という関係から共同生活者に転落する寸前で、なんとか足を踏ん張ろうとしている。

 スワッピングという選択肢が、はたしてこの夫婦を救うのかどうかはわからない。夫婦の乗った自動車が朝もやの中に消えていくエンディングが、未来の不確かさを暗示している。

(英題:CLUB BUTTERFLY)

2002年9月上旬公開予定 銀座シネパトス
配給:「クラブ・バタフライ」上映委員会 宣伝・問い合せ:スキップ
(1999年|1時間39分|韓国)

ホームページ:http://www.club-butterfly.info/

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関連書籍:スワッピング実践講座
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