今昔伝奇
剣地獄

2002/05/29 映画美学校第2試写室
連作時代劇『今昔伝奇』シリーズ第3弾は永澤俊矢主演の大チャンバラ。
後半の立ち回りはともかく、前半は話がスカスカだ。by K. Hattori

 NAKA雅MURA脚本による連作時代劇『今昔伝奇』の第3話は、永澤俊矢扮する侍が父の仇を討つため侍たちと壮絶な斬り合いをする大チャンバラ。第1話『花神』もそれなりにアイデアがあり、第2話も面白かったが、やはり時代劇の花はチャンバラだろう。この映画では剣舞のような型にはまった殺陣ではなく、『十三人の刺客』や『人斬り』のようなリアルな殺陣を指向している。敵は複数、己はひとり。ならば地の利を生かし、ゲリラ戦法で敵を攪乱しながら戦わなければならない。永澤俊矢扮する侍は山中に潜んで敵の到来を待ちながら、道行く旅の武士を襲っては腰のものを奪って山中のあちこちに隠しておく。敵が現れたら斬っては逃げ、逃げながら血糊に汚れ刃こぼれした刀を投げ捨て、隠してあった新しい刀を拾って再度反撃に転じる。刀を複数用意する戦法は、『七人の侍』から『十三人の刺客』に受け継がれた定番スタイルで、ひとりの人間が複数の敵と斬り合うときにはどうしても必要な準備になる。

 映画の中では主人公の男が、敵を襲う前にさんざんイメージトレーニングをする場面が出てくるが、ここではテレビ時代劇でもよくある、出会い頭に一発で相手を切り伏せる殺陣を見せる。敵の懐に飛び込んで袈裟懸けに斬る。横に飛び退きながら横一文字に胴をはらう。さらに反転して後ろの敵を唐竹割りにぶった切る。まさに舞うような剣技だ。だがこれはあくまでもイメージトレーニングであって、実際の戦闘はもっと泥臭いものだ。互いに身体に幾つも小さな傷を負いながら、それでも決着は付かない。相手を大きく斬りつけて大量の出血があったとしても、切り口が急所を逸れていれば、人間はそうそう簡単にくたばってくれない。かくして血みどろの人間が半狂乱になって刀を振り回す、凄惨なシーンが延々続くことになる。これはそれなりに見応えがあるが、何しろ低予算映画で『十三人の刺客』のような要塞が作れるわけではないから、主人公も敵もひたすら山の中を駆け回るばかり。意欲は大いに買うが、見た目の変化が乏しくてやや単調に感じられなくもない。

 斬り合いが始まるのは映画終盤になってからで、それまでのエピソードは少々退屈。舞台は戦いが行われる山の中しかないわけだし、過去のいきさつも未来もすべては戦いの中で表現されてしまうから、この話はせいぜい45分か1時間もあれば語れてしまうものなのです。それを無理矢理に倍の長さに延ばしているから、映画前半はあってもなくても同じような話になる。これは映画前半に登場する姉弟の仇討ち話をもう少し膨らませて、前半にも斬り合いの小さな山場を用意しておくなどの工夫が必要だったと思う。前半で主人公の男が姉弟の仇討ちを手助けし、そこで男の剣の腕前を観客に見せておくと、後半の緊迫感が増したし、映画のボリュームも無理なく膨らませることができたと思う。大杉漣のエピソードだけが、ちょっと浮いてしまっているのは残念。これは脚本段階で、もっと工夫できたはずの話です。

2002年7月6日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:グルーヴコーポレーション 宣伝:リベロ

(上映時間:1時間33分|日本)

ホームページ:http://www.garinpeiro.com/

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