今昔伝奇
花神

2002/05/10 映画美学校第2試写室
愛し合うカップルが男女交合の道祖神になるという時代劇。
必要以上に上映時間が長くテンポが悪くなった。by K. Hattori

 3人の監督がDVを使って時代劇映画3本を競作する『今昔伝奇』シリーズの第1弾は、望月六郎監督が男女の情念とエロスの世界を描いた『花神』。第2弾は宮坂武志監督の『座敷童 百物語』、第3弾は佐藤敏宏監督の『剣地獄』となる。3作共にオープニングとエンディングには奥田瑛二扮する琵琶法師が登場するが、この部分は奥田瑛二本人が監督している。

 時は中世。場所は山に囲まれた小さな村。若い住職・善庵は、薄暗い山道を駆ける修行の日々を送っていた。彼は幼馴染みの千代の身の上が心配なのだ。裕福な農家の娘として何不自由なく暮らしながら、いつも暗い表情で小さな声で離す千代。善庵と千代は幼馴染みとして育ち、今でも互いに好意を寄せる間柄だ。だが彼女は夜ごと実父に犯されながらどうすることもできず、自分の身の汚れを自ら責めさいなんでいるのだった。何とかして千代を助けたい。そう思う善庵だったが、彼にできることは何もない。ある日彼は、山の中で自然と一体になりながら自由奔放に生きる山の民と出会う。不遜なその態度を無礼と感じつつも、彼の言葉に引きつけられていく善庵。じつはこの山の民は、山の神の化身だった。善庵は不思議な力が体に満ちてくるのを感じ、山を駆け下りると千代の手を取って山へと駆け込んでいく。

 主人公の善庵を演じるのは、『新・極道記者/逃げ馬伝説』や『皆月』で望月作品に出演している篠原さとし。ただし残念ながら、僕はこの俳優についてこれまでまったく印象がなかった。千代を演じているのは、やはり『新・極道記者/逃げ馬伝説』や『極道懺悔録』などの望月作品に出演し、最近では『棒 Bastoni』でもヒロインを演じていた金谷亜未子。この女優は特に美人というわけではないが、濡ぎっぷりのよさがそれをカバーして余りある。脱いだ時に演技が萎縮せず、のびのびと大きく見えるのだ。今回も映画前半はイマイチですが、濡れ場が出てくる中盤からはよくなって、最後はフルヌードで愛する人の名を絶叫するという、ただそれだけのことで、それなりに説得力のある芝居を作ってしまう。望月作品への出演が多いので、監督との信頼関係というものもあるのでしょう。山の民役で北村一輝が出演しているが、この人も大河ドラマ出演を経て一回り大きくなった感じがする。昔から注目していたのでちょっと嬉しい。

 映画そのものの印象は「長い」の一語に集約される。物語自体は『トワイライトゾーン』系のちょっと不思議なファンタジーなので、ストーリーを語るだけなら30分か40分で終ってしまう。そこを数々の濡れ場で肉付けし、道祖神を信仰する素朴な村人たちのエピソードを併走させるなどして全体をボリュームアップしているのだが、それでもこの内容で1時間50分は持ちこたえられないだろう。脚本はNAKA雅MURA。無理矢理映画を大きくしたツケはテンポの悪さになって、映画全体の足を引っ張ってしまったように思う。もっとタイトに演出すれば、それなりに面白く観られたと思うのだが。

2002年7月6日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:グルーヴコーポレーション 宣伝:LIBERO

(上映時間:1時間50分)

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