愛しのローズマリー

2002/04/19 FOX試写室
グウィネス・パルトロウが特殊メイクでオデブちゃんに変身。
ファレリー兄弟の最新作は笑って泣けるラブコメディ。by K. Hattori

 本人はさして風采がいいわけでもないくせに、自分が付き合う女性に対しては徹底的に外見にこだわるハル。仕事もちゃんとできるし、友人としては親身に打ち解けあえるいい男なのに、こと女性に対しては中身より外見を優先させてしまうのだ。そんな性格が災いして、彼には当然恋人などいるはずがない。自分でもこの性格の欠点がわかってはいるけれど、それでも改まらないのが「性格」というものだろう。だがハルは偶然知り合った心理カウンセラーから、女性の心の美しさが外見として見える能力を授けられる。彼の前に次々と現れる絶世の美女たち。だがハルの友人たちには、それがどう見てもブスなのだ。自分の視点の変化に気づかないまま、ハルはついに運命の恋人に出会う。美人でスタイルも抜群な上、気だてもよくて、しかもハルのことを愛してくれる彼女の名はローズマリー。彼女はハルが勤める投資銀行社長の娘でもあり、彼女の口添えで出世への道も見えてくる。ハルの人生は順風満帆だったのだが……。

 監督・脚本は『メリーに首ったけ』や『ふたりの男とひとりの女』のファレリー兄弟。兄弟としての初監督作『キングピン/ストライクへの道』は男たちのドラマだったけれど(『ジム・キャリーはMr.ダマー』は兄ピーターの単独監督作)、『メリーに〜』以降は一貫して人気女優を使ったラブコメディを作り続けている。下ネタや宗教や身体障害や病気をネタにしたギャグなど、良識派の眉をひそめさせるような映画が多いのだけれど、すべてを笑い飛ばしたあとに残るハートウォーミングな持ち味が、ファレリー兄弟の映画の魅力だと思う。兄弟の映画は差別される側をコテンパンに笑いのめしたあとで、そうした差別を成り立たせている枠組み自体を解体していく。例えばこの映画では、ブスな女性を絶世の美女と信じて口説きまくるハルの行動を笑うことで、間接的にブスな女性を笑いものにしているという見方もできるだろう。ところが映画はやがて、外見でしか女性の魅力を計れなかったハルやその友人たちの愚かさを丁寧に描き、ブスとか美人という硬直化した評価でしか女性を見られない男の価値観を粉砕してしまうのだ。

 ハルを演じたジャック・ブラックが好演しているけれど、この映画で一番感心させられたのはローズマリー役のグウィネス・パルトロウだった。観客はこのヒロインがとんでもないオデブちゃんであることを、事前に知っている。その上でヒロインが「私のことを痩せているとか美人だとか言わないで」と困った顔を見せたり、ハルのアパートを訪ねた彼女がはにかんで見せたりする様子をゲラゲラ笑い、同時にこのヒロインの気持ちに感情移入してホロリとさせられてしまうのだ。

 差別表現と差別を笑い飛ばすギャグとの境界線はかなりきわどいと思うのだが、この映画はその境界線ギリギリのところで勝負している。何を差別とするかの基準は人それぞれだから、中にはこの映画を差別的だと思う人がいるかもしれないけれど、僕はまるきりOKでした。

(原題:SHALLOW HAL)

2002年5月中旬公開 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス

(上映時間:1時間54分)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/shallowhal/

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