パニック・ルーム

2002/04/16 ソニー試写室
ジョディ・フォスターとデビッド・フィンチャー監督が作った古典的サスペンス。
家に押し入った強盗と母娘の対決を正攻法で描く。by K. Hattori

 ジョディ・フォスターの主演最新作は、『セブン』や『ファイト・クラブ』のデビッド・フィンチャー監督によるサスペンス映画。若い愛人のもとに走った夫と離婚し、莫大な慰謝料と養育費を手に入れたメグ。だが思春期の娘サラとの新しい生活は、どこかギクシャクしたままだ。離婚はメグにとってもサラにとっても、大きな心の傷になっている。ふたりはその憂さを晴らすように、紐育のど真ん中の高級アパートに移り住む。4階建ての大きな建物で、以前は富豪の老人が住んでいたのだという。この物件のセールスポイントのひとつは、3階の寝室に併設されている「パニック・ルーム」と呼ばれる防犯シェルター。家に強盗が入り込んだとき、警察が来るまで家人の安全を確保するための堅牢な部屋だ。だが引っ越しをしたちょうどその夜、メグたちの家に3人組の強盗が入り込む。気配を察して、さっそくパニック・ルームに逃げ込むメグとサラ。だが強盗たちの狙いは、まさにそのパニック・ルームの中にあったのだ。前の住人が残したまま未だ発見されていない遺産が、パニック・ルームの隠し金庫に眠っているのだ……。

 家に強盗が入り込み、外部と連絡が取れないままヒロインが強盗と対決する羽目になるという状況設定は、オードリー・ヘプバーン主演の『暗くなるまで待って』を連想させる。押し入った強盗のうちフォレスト・ウィテカー扮する男が、生活のために止むに止まれずこの計画に加わったものの、血が流れることを好まない善人だという設定は典型的なグッド・バッドマンもの。難攻不落のパニック・ルームに逃げ込んだ母娘が、いかにして外部に連絡を取ろうとするか。内部からしかドアを開けられない部屋を、強盗たちがどうやって攻略しようとするか。前半は攻撃側と防御側の知恵比べだ。このまま両者がドアをはさんでにらみ合いを続けている限り、映画はまったく先に進まない。そこでこの映画は、母娘の側にも、強盗団の側にも波乱を起こして、さらに両者をギリギリのところにまで追い込んでいく。

 『セブン』や『ファイト・クラブ』のような挑発的内容を求めると、デビッド・コープの脚本はいかにもスタンダードで刺激が少ないように思われるかもしれない。だがこの映画はこれで構わない。マンハッタンの高級アパートという限定された空間と、母娘ふたりに強盗3人という限られた登場人物。こうしたミニマムな要素で、観客をいかに楽しませるかというのも映画監督の腕の見せ所だろう。映画の導入部でアパートの内部を不動産屋に案内させ、空間の作りを観客に周知徹底させておく丁寧さ。部屋と部屋を廊下や階段で結んだ空間の中を、複数の人間がパズルのコマのように動き回る。それを防犯カメラの映像で、きちんとモニターさせるのも面白い。

 へたをすると舞台劇のようになりそうな素材だが、フィンチャー監督の魔法のようなカメラワークが、小さな空間を無限の可能性を持つ巨大な世界に変貌させる。カメラがコーヒーポットの持ち手をくぐるのには驚いた。

(原題:PANIC ROOM)

2002年5月公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 宣伝:メイジャー

(上映時間:1時間53分)

ホームページ:http://www.panicroom.jp/

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