ワンス・アンド・フォーエバー

2002/04/12 GAGA試写室
1965年のベトナムでアメリカ軍が多大な犠牲を出した戦いを描く。
主演はメル・ギブソン。監督はランダル・ウォレス。by K. Hattori

 1965年に北ベトナムへの空爆を開始したアメリカが、初めて経験した大規模な地上戦。それが11月に起きたイア・ドランの戦いだ。小規模な攻撃を仕掛けて山岳地帯に逃げ込んだ敵を追って、アメリカ軍はヘリコプターで400名の兵士を現地に投入。だがそれは用意周到に待ちかまえる北ベトナム正規軍の罠だった。ヘリコプターから地上に降りた兵士たちは、完全装備の北ベトナム軍の前に次々に倒されていく。原作はこの作戦で指揮を執ったハル・ムーア中佐(当時)と、UPIの記者として戦場に飛び込んだジョー・ギャロウェイが書いたノンフィクション。映画の中ではメル・ギブソンがムーア中佐を、『プライベート・ライアン』で凄腕の狙撃兵を演じたバリー・ペッパーがギャロウェイ記者を演じている。自ら原作の映画化権を取得し、製作・脚本・監督の3役を兼ねたのは、『ブレイブハート』や『パール・ハーバー』の脚本家であり、『仮面の男』の監督でもあるランダル・ウォレス。実際の戦闘をリアルに再現するという『プライベート・ライアン』の系列に属する映画だが、この映画の特徴は、最前線で戦う兵士たちを描くと同時に、兵士たちが無事に帰還することを願う家族の姿、特に女性たちの姿を描いていることだと思う。

 完成や公開の時期から考えると、この映画に9・11連続テロの影響を見ないわけには行かない。結局この映画が述べているのは「戦争は兵士たちだけではなく、国民全体で戦うんだ!」「戦場の兵士たちの苦しみや苦労を、銃後にいる市民も分かち合おう!」というメッセージに他ならないのではないか。映画はベトナム戦争を描いていながら、そこにはテロの犠牲になった多くの市民の姿がだぶってくる。この映画の中では兵士が戦場でいかに苦労して戦っているかという描写より、兵士の家族の不安、愛する人を失った悲しみに力点が置かれている。戦場で戦う兵士は死の間際に「妻に愛していると伝えてくれ!」と伝言を残し、突撃前夜に愛する恋人へ最後の手紙を書く。戦場と家族は遠く離れていても、気持ちはいつだってつながっている。

 この映画はこうして「戦争と家族」を平行して描くことで、戦争映画としてのダイナミズムをかなり殺してしまっていると思う。映像に重なる音楽も物悲しげなマーチばかりで、まったくテンションが上がっていかない。『プライベート・ライアン』も『ブラックホーク・ダウン』も戦場を陰惨なものとしか描いていないけれど、兵士たちが否応なしに追い込まれるギリギリの緊張感のようなものは、もっと感じられたと思うのだけれど……。

 この映画は最後に、「兵士たちは国のために戦ったのではなく、戦友たちのために戦ったのだ」と言う。おそらくそれは、戦場にいる兵士たちの正直な気持ちなのだろう。『ブラックホーク・ダウン』でも同じことを言っていたしね。でもこの映画は「戦友のために」より、「家族のために」という描写に多くの時間を割く。それが映画の弱さになっているようにも思うのだ。

(原題:WE WERE SOLDIERS)

2002年初夏公開予定 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給

(上映時間:2時間18分)

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原作:ワンス・アンド・フォーエヴァー(角川文庫)
原作洋書:We Were Soldiers Once... And Young
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