E.T.
〈20周年アニバーサリー特別版〉

2002/04/10 UIP試写室
スピルバーグのSFファンタジーを最新技術でリニューアル。
主人公たちが別れるシーンには涙がポロリ。by K. Hattori

 今から20年前(1982年)に製作され、世界中で大ヒットしたスピルバーグ監督の代表作が、最新デジタル技術でリニューアルされた。オリジナル版は日本でも'82年12月にお正月映画として封切られ、入場料金が1500円という時代に配収96億円というとてつもない記録を打ち立てた。この記録は15年後に『タイタニック』と『もののけ姫』に破られるまでナンバーワン。現在は『千と千尋の神隠し』がそれらの記録をさらに上回っているけれど、この映画が映画興行史に残るヒット作であることは間違いない。今回の特別版はオリジナル版からはカットされたシーンを少し付け加えたりしているそうだ。上映時間はオリジナルから5分増えて、2時間ちょうどになっている。音響も5.1チャンネルのドルビー・デジタルに変わっている。だが今回の映画の一番大きな特徴は、最新のCG技術を使ってE.T.の顔が表情豊かになったことだろう。また細かな点ではあるが、映画のクライマックスで主人公たちを追いかける警官の手からピストルを消し、無線機に置き換えてもいる。確かに丸腰の子供たちを追いかけるのに、物々しい銃は必要ないだろう。この銃については、スピルバーグがこの20年間一番直したいと思っていた点だという。

 僕自身は20年前にこの映画を劇場では観ていない。10年ほど前、知り合いにLDを借りて観たのが最初だ。その時は「それほど大した映画じゃないな」と思った。その印象は、今回の特別版を観ても変わらない。しかし有名な自転車が空を飛ぶシーンは、LDでは感激しなかったけれど、大きな画面だとそれなりに胸にジーンと来るモノがある。自転車が空を飛ぶシーンを2回見せて観客の涙腺をゆるめておいて、最後は「COME」「STAY」「OUCH」という3つの言葉だけで観客の涙を振り絞る。観客が泣けばいい映画だとは限らないけれど、僕はやっぱりこのラストシーンに泣いてしまった。

 結局この映画は、あちこちに生煮えのところがあるのです。宇宙人を捕まえに来る政府の秘密組織らしい連中は、いったい何が目的だったのか。エリオットの前では善良そうな顔をしていたけれど、宇宙人探索のために盗聴はする、家人の留守に不法侵入はするというあの連中が、まるっきり善良な人々であるはずがないではないか。元気だった宇宙人はなぜ急に弱りはじめてしまったのか。死んだはずの宇宙人が急に生き返るのはなぜか。この映画にはあちこちに「ご都合主義」があって、それが映画全体を甘っちょろくさせている。しかしこうした甘っちょろさも、ひょっとしたら計算ずくなのかもしれない。ご都合主義という障壁を、「それでもイイじゃないか!」と観客が乗り越えてきたとき、そこには映画の作り手と観客の共犯関係が成立するのです。

 あれから20年。10歳だったエリオット少年は、今年30歳になっているはずだ。彼は宇宙人と友達になった子供時代のことを、どう思って暮らしているのだろう。そんなことが、ふと気になる映画でした。

(原題:E.T. THE EXTRA-TERRESTRIAL: THE 20th ANNIVERSARY)

2002年4月27日公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:UIP

(上映時間:2時間00分)

ホームページ:http://et20.lycos.co.jp/

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シナリオ:E.T.
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