華の愛
遊園驚夢

2002/03/08 GAGA試写室
モスクワ国際映画祭で宮沢りえが最優秀女優賞を受賞した映画。
1930年代の蘇州が舞台のラブストーリー。by K. Hattori

 昨年6月に開催されたモスクワ映画祭で、宮沢りえに最優秀女優賞をもたらした作品がこれ。当時はこの映画のことを誰も知らなくて、宮沢りえが受賞云々というニュースを聞いても「いつの間にそんな映画に出ていたの?」ぐらいの感じだった。(映画は秋になってから、東京国際映画祭の特別招待作品として上映されている。)このニュースが寝耳に水だったので、宮沢りえのアジア進出は突然のことのように思えたのだが、じつはこの作品以前にも、彼女は『運轉手之戀』という台湾のコメディ映画に主演しているそうだ。

 物語の舞台は1930年代の蘇州。大富豪の第5夫人として豪奢な屋敷で贅沢な暮らしをしているジェイドは、その暮らしぶりとは裏腹の孤独な毎日を送っていた。かつては遊郭の歌姫としてその名を知られていた彼女は、その美しい歌声と容姿を見そめられ、この屋敷の主人に身請けされてきたのだ。家が没落しかけているとはいえ、生活には何も不自由はない。子供にもひとり恵まれた。だがジェイドはこの屋敷の中で、文字通りカゴの鳥同然の暮らしなのだ。主人にとって彼女は、珍しいオウムや宝石類と同じ価値しかない。そんな彼女の孤独に気づいているのは、主人の従姉妹ランだけだった。彼女はしばしばジェイドのもとを訪ね、寂しい心をつかの間癒していくのだった。ジェイドとランの間には、恋慕の情にも似た心の絆が育っている。家の財政が苦しくなって暇を出されたジェイドは、学校の教師として自活しているランを頼って、彼女の家で一緒に暮らすようになる。

 ジェイドを演じるのが宮沢りえで、ラン役には『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のジョイ・ウォン。監督は『美少年の恋』のヨン・ファンで、『美少年の恋』でデビューしたダニエル・ウーも出演している。ジェイドは美しい歌声の持ち主とうい設定だが、歌も含めて宮沢りえの台詞はすべて吹き替え。声のトーンが我々の知っている彼女の声とだいぶ違うので、映画の導入部では少し違和感を感じてしまう。しかもこの役は感情をあまり表に出さないので、快活な「りえスマイル」をこの映画で見ることはできない。

 上映時間は2時間2分。これがちょっと長く感じる。歌のシーンや豪華な宴会シーンなどがちょっとずつ長く、全体のテンポを間延びさせているようにも感じた。恋の情熱を切々と描いた監督の前作『美少年の恋』に比べると、この映画の恋愛描写には切羽詰まったものがあまり感じられない。これは劇中の長々とした風俗描写に、ドラマの足が引っ張られているからではないだろうか。古き良き時代の蘇州を再現したシーンに、監督やスタッフが並々ならぬ力を注いでいることはよくわかる。しかしこうした場面が、結果として物語の進行テンポを遅らせているように感じられてならない。劇中劇とも言える歌や踊りの場面を短くしていくと、映画はもっとテンポがよくなったと思う。ただしテンポがよくなればこの映画が面白くなったかというと、それはまた別の話だけどね。

(原題:遊園驚夢 Peony Pavilion)

2002年5月公開予定 テアトル新宿他・全国公開
配給:GAGA、グルーヴコーポレーション

(上映時間:2時間2分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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