パコダテ人

2002/03/08 東映第1試写室
宮崎あおい扮する女子高生のオシリにある朝シッポがはえてきた!
函館を舞台にしたキュートなファンタジー映画。by K. Hattori

 青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』や塩田明彦監督の『害虫』など、幸せ薄い美少女のイメージが強かった宮崎あおいの主演最新作。今回はファンタジックなラブコメディで、彼女の新しい魅力が花開いていると思う。監督は『GLOW/僕らはここに…』『sWinG maN』の前田哲。宮崎みどりは『sWinG maN』にも出演していたという。あんまり印象に残ってないけど……。

 主人公・日野ひかるは、函館で暮らす16歳の女子高生。ところが彼女の平和な高校生活は、ひとつの悲鳴と共に破られた。朝起きたら、なぜかひかるのオシリにシッポがはえていたのだ。こんなものを他人に見られたら大変なことになる。ひかるは何とかオシリを押えて学校に行ったのだが、運悪く通学途中で三流ローカル紙「函館スクープ」の記者にシッポを激写されてしまう。「シッポ人間登場!」に函館の町は大騒ぎ。家族に秘密を打ち明けたひかるは、その愛情に支えられて自分が「シッポ人間」であることを世間にカミングアウト。「シッポがあっても私は私。日野ひかるが、ぴのぴかるになった程度のこと」と微笑む彼女に世間は大感動し、ひかるは一躍アイドルになるのだが……。

 脚本を書いたのは今井雅子。函館港イルミナシオン映画祭第4回シナリオ大賞の、準グランプリを受賞した作品だ。シッポ人間・日野ひかると家族の愛情ドラマを中心に、同じ日、同じようにシッポ人間になってしまった男性市役所職員のエピソードを併走させていく構成。ここに「なぜシッポ人間が誕生したのか?」というミステリーがからみ、ひかると同級生の男子生徒・隼人の淡い恋愛も描かれる。映画の規模のわりには盛り込まれているエピソードの数が多いのだが、登場人物がどれも陰影と立体感に富んだキャラクターとして描かれているせいか、どのエピソードも楽しく仕上がっている。ひかるの家族やクラスメイトたち、幼稚園の先生や市役所職員、函館スクープの編集部の面々まで、誰ひとりとして薄っぺらなキャラクターが存在しない。これは脚本の功績より、キャスティングと演出によるところが大きいのではないだろうか。例えば憎まれ役である函館スクープの編集長に木下ほうかをキャスティングするとか、市役所職員の同僚に大森南朋がいるとか、調査団長役で田中要次が登場するとか、普通だと点景人物としておろそかになってしまいそうな部分にも、きちんと目の行き届いたキャスティングをしているのは好感が持てる。

 特にひかるの家族はすごくよかった。父親が徳井優で、母親が松田美由紀というオモロイ夫婦。赤毛のお姉さん、みちるを演じた松田一沙もヨロシイ。この4人家族の醸し出す温かいぬくもりが、この映画の持つ温かさの基調になっていると思う。かくれシッポ人間を演じた大泉洋もいい感じだ。この映画には、ギラギラと目を光らせた人がひとりも出てこないのがいい。みんなちょっとトボケている。クライマックスとラストシーンのテンポが悪いのは欠点だが、映画全体から見れば小さな傷だ。

2002年4月27日公開予定 銀座シネパトス、新宿東映パラス2
配給:アートポート、アースライズ

(上映時間:1時間22分)

ホームページ:http://www.pakodatejin.com/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:パコダテ人
関連DVD:宮崎あおい in 『パコダテ人』
主題歌「炭酸水」収録CD:カメレオン(Whiteberry)
関連DVD:宮崎あおい

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ