翼をください

2002/03/05 映画美学校第1試写室
全寮制の女子寄宿学校で発生した生徒同士の愛と葛藤。
わかりやすい映画だけど、ちょっと腰が弱い。by K. Hattori

 フランス語圏カナダで長年活躍している、レア・プール監督の初英語作品。実在の事件をもとにして書かれたスーザン・スワンの小説を、ジュディス・トンプソンが脚色している。物語の舞台は森に囲まれた女子寄宿学校。母親の死後、再婚した父にこの学校に連れてこられたメアリーは、同室のトリーとポリーが夜ごとにベッドで愛し合う姿を目撃して面食らう。だがふたりがごく自然に振る舞う様子を見ているうちに、メアリーは彼女たちの存在にも慣れていく。だがある日、トリーの妹が突然部屋を訪れ、姉とポリーが同じベッドで過ごしている場面を目撃。トリーは家族にポリーとの関係が知られることを恐れてポリーとの関係に距離を置き、これ見よがしに近くの学校の男子生徒とつきあい始める。主演は『コヨーテ・アグリー』のパイパー・ペラーボと、『キャメロット・ガーデンの少女』『シックス・センス』のミーシャ・バートン、それに本作が本格的な日本初登場となるジェシカ・パレ。ハリウッド映画でも活躍しているグレアム・グリーンが、庭師の役で出演している。

 トリーとポリーは精神的にも肉体的にも強く互いを求め愛し合う関係だが、彼女たちはレズビアンではないのだという。ポリーは「校長は教師の誰それとデキてる」などと同性愛者を馬鹿にしたような口振りだし、トリーが離れていった時、メアリーに「彼女はレズビアンじゃなかったのよ」と言われると、「私はレズじゃない」と大声で怒鳴る。ポリーは「女」としてトリーを愛したのではなく、ひとりの人間として「トリー」を愛したのだ。その相手にたまたまついて回る属性が「女」だっただけ。しかしそれは周囲の目から「同性愛」のレッテルを貼られて、好奇の目で見られてしまうのだ。

 話はよくわかるし、登場人物たちの気持ちも伝わってくる。映像もきれいで、全体にオシャレな感じ。しかし映画としては少々物足りない。映画の主人公は転校生のメアリーだが、彼女は狂言回しで、実際の主人公は不当に奪われた愛を取り戻そうとするポリーだろう。彼女は幼い頃に母親に捨てられ、養父母との折り合いも悪く、不良っぽい言動から学校の中でも少し浮いた存在だ。そんな彼女にたったひとり「愛」を与えてくれたのがトリーだから、彼女に去られることはポリーにとってとてつもない苦しみなのだ。しかも親密な関係が終わった後も、ふたりは同室のまま。ほんの少し前まで自分と愛し合っていたベッドからトリーが夜な夜な抜け出し、男に抱かれに行くのをポリーは眺めているしかない。ポリーは彼女を止めたいが、彼女の自尊心がそれを許さない。

 メアリーは父の再婚で家族からはじき出されていることもあり、愛情に恵まれないポリーと自分を重ね合わせるのだろう。ところがこの映画では、その点がちょっと弱い。メアリーはいつまでも事態の推移を見つめる傍観者でしかない。また周辺人物の関わりも弱く、校長がポリーに「あなたの気持ちはわかる」と言う台詞も、はたしてどの程度わかっているのかよく伝わってこない。

(原題:Lost and Delirious)

2002年GW公開予定 シネスイッチ銀座
配給:アルバトロス・フィルム

(上映時間:1時間40分)

ホームページ:http://www.tsubasa-movie.com/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:翼をください
DVD:Lost and Delirious (amazon.com)
イメージソング:それぞれの空(大木彩乃)
原作洋書:The Wives of Bath(スーザン・スワン)
関連DVD:パイパー・ペラーボ
関連DVD:ミーシャ・バートン

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ