アザーズ

2002/01/29 GAGA試写室
ニコール・キッドマン主演の正統派ゴシック・ホラー。
観客の背筋を心地よくゾクゾクさせてくれる。by K. Hattori

 『オープン・ユア・アイズ』のアレハンドロ・アメナバール監督が、ニコール・キッドマン主演で撮った最新作。製作はトム・クルーズ。『オープン・ユア・アイズ』に惚れ込んだクルーズが、そのリメイク権を買うと同時に製作に乗り出した作品で、おそらくこれが彼とキッドマンにとって最後のコラボレーション作品になるに違いない。でもそうしたイキサツを除外しても、この映画は1本の作品として面白くできている。ショッキングなシーンやグロテスクな描写がなくても、観客を震え上がらせる演出の数々。さすがに巧いものだ。

 1945年。第二次大戦末期のイギリス、ジャージー島。出生した夫の帰りを待つグレースは、広大な屋敷で子供二人と暮らしている。子供たちは極度の光アレルギーで、屋敷の窓という窓にはいつも分厚いカーテンが掛かっている。ある朝その屋敷に、3人の新しい使用人がやってくる。少し前に突然使用人たちが出ていったばかりだというグレースは、彼らを雇い入れることにする。だがその日から、屋敷には奇妙なことが起こり始める。娘が見たという少年の姿と話し声。無人の部屋や廊下から聞こえてくる足音。音楽室のピアノはひとりでにメロディーを奏でる。子供たちの悪戯か? あるいは新しい使用人たちが意趣あって嫌がらせをしているのか? そうではない。屋敷の中には、グレースたちには見えない何者かが入り込んでいる。それはいったい誰なのか?

 この映画の根底にあるのは、ヒロインのグレースが持つ「子供たちを守らなければならない」という強迫観念だ。だが彼女の安住は、姿の見えない何者かによって妨げられる。この枠組みは、つい先日観た『仄暗い水の底から』と共通するものだ。『仄暗い〜』では古いマンションが舞台となっていたが、『アザーズ』では古い洋館が舞台。『仄暗い〜』では天井からの雨漏りが異変の発端となるが、『アザーズ』では天井から聞こえる足音が異変の発端となる。情緒不安定気味のヒロインが、かすれた小さな声でぼそぼそ喋るというのも同じ。それでいて映画の雰囲気がまったく違うのは、物語の違いであり、監督の資質の違いだろう。どっちも恐いけどね。

 「衝撃の大どんでん返し」を売りにしたわけではないが、あらかじめ「何かある」という話を聞いていたせいか、謎の正体は途中でわかってしまった。しかしこの映画、この「謎」が途中で観客にばれてしまっても構わないと思っているフシがある。おそらく多くの観客は、この映画を観ながら途中で「ひょっとしたら」という疑惑を抱き始めるだろう。最後に「衝撃のどんでん返し」を狙うなら、もう少し注意深くヒントを伏せた方がいいのだ。でもこの映画はそうしない。観客に手の内を少しずつ見せながら、ラストの種明かしまでスマートに着地させる。これによって、種明かし部分で物語が分断されることなく、映画の最後に悲しげな余韻を含ませることに成功しているのだ。恐くて悲しくて哀れな物語でした。

(原題:The Others)

2002年GW公開予定  丸の内プラゼール他・全国松竹系
配給:ギャガ・ふーマックス 問い合せ:ギャガ、リベロ、ビー・ウィング

(上映時間:1時間44分)

ホームページ:http://www.others-jp.com/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ