荒ぶる魂たち

2002/01/22 東映第1試写室
三池崇史監督が加藤雅也主演で描くヤクザ映画。
監督本人が鉄砲玉役で出演している。by K. Hattori

 日本には現在映画監督と名乗る人が1000人ぐらいいるそうだが、日本で作られる劇場映画はせいぜい年に300本程度に過ぎない。単純計算して平均すると、映画監督は3,4年に1本しか映画が撮れない計算になる。そんな過酷な映画業界の中で、年に3本も4本も映画を撮っているのが三池崇史監督だ。去年の年末から今年の前半に公開される映画だけでも、『殺し屋1』『DEAD OR ALIVE FINAL』『カタクリ家の幸福』そして『荒ぶる魂たち』がある。三池監督作のすべてが傑作とは言わないが、どの映画も決して「粗製濫造」にはなっていないところが、三池監督に対する信頼感になっているのだと思う。濫造ではあるけれど、どの映画も絶対に「粗製」にはしまいという意気込みが、三池映画にはある。

 『荒ぶる魂たち』は大映製作のヤクザ映画で、『疵』シリーズや『極道血風録』『鬼極道』『獅子の血脈』の武知鎮典が企画・原案・脚本を担当している。主演は加藤雅也。共演に竹中直人、松方弘樹、伊武雅刀、白竜、ミッキー・カーチス、美木良介、秋野太作、石橋蓮司など、実力のある顔ぶれがずらりと勢揃いした2時間半の大作だ。映画の作り自体は低予算の安っぽさが漂うが、役者の厚みがそれを補ってあまりある。

 物語の発端は、構成員一万を誇る巨大組織・天成会の海渡幹事長が、傘下組織を一気に増やそうと画策したことから始まった。狙いをつけたのは、長年対立を続ける横溝一家と白根組。両者を一本にまとめて引き入れれば、天成会での海渡の立場も盤石のものになる。海渡は白根組の若頭・水島と補佐の室井を呼び出し、組織の取りまとめを依頼する。やがて白根組から、ひとりの鉄砲玉が横溝一家の縄張りに送り込まれるのだが……。

 人間の命を駆け引きの道具にする巨大組織の謀略と、その手駒として翻弄される小さな組織の構成員たち。この映画は組織末端の小さな組に属する男たちが、巨大な組織の横暴で理不尽な力に丸め込まれることを拒絶することで生じる壮絶な戦いぶりを描いている。対立する組のトップをそれぞれ潰し、都合のいい後釜を据えて丸ごと飲み込んでしまおうとする海渡のたくらみ。その計画を知りつつ、抗いきれない組の幹部たち。何も守るもののない末端組織のチンピラヤクザと、配下に数百数千の子分衆を抱えた組織幹部の思惑がすれ違う。

 映画導入部は女性のモノローグで始まるが、映画の本筋そのものにはほとんど女っ気がない。男が男に惚れ込み、惚れ込んだ男に自分の夢を託す。そんな古風な仁侠道は今さら成立しないのだが、それをギリギリのところで成り立たせてしまう三池演出の力強さ。竹中直人演じる樋口組長と、加藤雅也演じる主人公剣崎が幼馴染みだったという設定は、『岸和田少年愚連隊』『DEAD OR ALIVE 2/逃亡者』など過去の三池作品にも通じる少年時代の原風景だ。セピア色がかったこの原風景を核にして、男同士の血みどろの修羅場が展開していく。少々長い映画だが、ストレートな語り口には好感が持てる。

2002年陽春公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給:大映

(上映時間:2時間30分)

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