ドリアン・ドリアン

2001/11/19 徳間ホール
出稼ぎ者の街・香港の裏町を描くフルーツ・チャン監督の最新作。
ヒロインを演じるチン・ハイルーが素敵。by K. Hattori

 『メイド・イン・ホンコン』『花火降る夏』『リトル・チュン』の香港返還3部作で知られる、フルーツ・チャン(陳果)監督の最新作。大陸から香港に短期ビザで入国し、非合法な仕事で金を稼いで大陸に戻っていく人々を描いている点で、この映画は『リトル・チュン』の姉妹編のような作品になっている。『リトル・チュン』で大陸から来た少女を演じていたマク・ワイファンが、今回も路地裏で皿洗いをしている少女を演じているから、ふたつの映画の連続性はさらに強まる。約2時間の映画のうち、前半の1時間は香港の路地裏で生きる人々の姿を描き、後半の1時間は香港から故郷に帰った若い女の姿を描く。物語が香港を飛び出して中国地方都市の今を描いている点が、この映画と香港返還3部作の決定的な違いだろう。この映画は地方で暮らす人々の「都会への憧れ」と「都会生活の現実」を描くことで、香港という都市の特殊性を相対的に浮かび上がらせる。

 主人公は中国東北部・牡丹江からやってきた若い女イェン。彼女は出稼ぎに来たシンセン経由で香港に入り、歓楽街ポートランド・ストリートで娼婦として働いている。3ヶ月のビザで稼げるだけ稼ぐのが彼女の目的。そのために食事もそこそこ、1日に何十人もの客を取るのだ。やがてビザの切れる日がやってくる。イェンは不法滞在してまで香港で働く気はさらさら無い。稼いだ金を持って、故郷の町に戻るイェン。故郷の両親や友人たちは彼女が都会でどんな仕事をしていたか知ることもなく、大金を稼いできたイェンを都会で成功した者として受け入れる。「次はいつ南に行くんだ?」「今度南に行くときはぜひ親戚の子を連れて行ってくれ」などと言われて、ひどく困り果てるイェン。稼いだ金で何か商売をと考えていた彼女だったが、いざとなるとどんな仕事をしていいのかわからないのだ……。

 イェンの働くポートランド・ストリートには、大勢の人がたむろしている。だがそこにいるのは、外国や中国本土から渡ってきた出稼ぎ人ばかりだ。イェンの同僚の女たちもそうだし、女たちと一緒に行動するガード役の若い男も、路地裏で皿洗いをするファンとその家族、それに中東系の浅黒い肌の男たちもいる。フルーツ・チャンの出世作は『メイド・イン・ホンコン』というタイトルだったし、その後の香港返還3部作ではいつも生粋の香港人を主人公にしていたように思う。しかし今回の映画でチャン監督が描いているのは、香港以外の場所からやってきて香港に寄宿する人々の物語なのだ。

 イェンにとっての香港は、女が体を張ればあっと言う間に大金を稼げる町だ。香港での彼女は仕事に対して積極的で、寸暇を惜しんでいくらでも客を取る。しかし故郷の町に帰れば、香港での仕事のことは思い出したくもない。当たり前かもしれないが、香港に対する愛憎入り交じった感情をイェンは持っている。こうした感情を、ドリアンという南国の果実に託して語っているのがこの映画。甘く柔らかなドリアンは常に腐臭を漂わせている。

(英題:DURIAN DURIAN)

2002年正月第2弾公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:大映

(上映時間:1時間57分)

ホームページ:http://www.daiei.tokuma.com/DURIAN/index.html

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