獅子の血脈

2001/10/17 TCC試写室
松方弘樹主演のヤクザ映画だけど、全体にどこかヘン。
そのヘンさを面白いと思う人は楽しめる映画だ。by K. Hattori

 とある地方都市の小さなヤクザ組織・秋葉組の組長が、趣味の釣りに出かけた折に変死する。秋葉組は組長が死んだことから一気に弱体化。跡目を相続した二代目はヤクザとしての経験も貫禄も足りず、このままでは組が消えてしまうのは時間の問題だ。そんな時、死んだ先代組長の親友だったという年輩のヤクザ嵐山がやってくる。嵐山は対立組織の鉄砲玉を追い払って二代目の命を救うが、これによって秋葉組と対立組織は抗争に突入。「長生きしたけりゃ堅気になれ!」と迫る嵐山に、「極道で生きて、極道で死ぬまでよ!」と息巻いてみせる二代目の東吾。嵐山は東吾を助けて連心会との戦いに参加し、ぼんぼん育ちの若い組長を一人前の男に育てようとする。なぜ嵐山はここまで東吾に肩入れするのか? じつは嵐山と東吾の間には、ある秘密の関係があったのだ……。

 血筋はいいはずなのに、どういうわけだか貫禄不足で成功しない二代目というのがいる。俳優の石原良純もそんな二代目のひとりだ。昭和37年生まれの39歳。父親は東京都知事の石原慎太郎。兄は小泉内閣を支える石原伸晃・行革担当大臣。とういことは、叔父さんが故・石原裕次郎ということだ。しかし本人は一体何をやっているのか。映画俳優としても、テレビ俳優としても泣かず飛ばずの位置で低迷し、現在はむしろ気象予報士の資格を持つお天気キャスターとして知られているのではあるまいか。この映画はそんな俳優・石原良純を糾問するかのように、ぼんぼん育ちの二代目組長という役を彼に割り振った。ヤクザとは名ばかりで明らかに貫禄不足。親の七光りで一家を任されたものの、実力も経験も自覚もないままずるずる組をダメにしていってしまう。そこに現れて尻を叩くのが、松方弘樹演じる嵐山というわけだ。この映画は秋葉組二代目組長・秋葉東吾がぼんぼんから一人前のヤクザに成長してゆく様子を、俳優・石原良純の成長と重ね合わせるという、なんだかとんでもない映画なのだ。これで本当に石原良純が役者として一皮むけたら、すごかったと思うけどなぁ……。

 監督は望月六郎。主演の松方弘樹が製作も兼ねていることから、基本的には松方弘樹のワンマンショーなのだが、それでもこの映画はかなり変わっている。登場人物がみんなヘンだ。一見すると全員がありがちな人物設定でありがちなポジションに立っているように見えて、じつは全員がどこかおかしい。そのおかしさが、まったく何の説明もされないまま画面に出てくる不思議さ。例えば松方弘樹の周囲に立てられるロウソク。何かあると身体に振りかけるコロン。嵐山の舎弟のカンフー。東吾と舎弟分の行進。対立組織の鉄砲玉を演じている小沢仁志の「つめて〜!」というのもヘンだし、その親分の手術着とオムツ、浣腸はいったい何なのだ? 物語はどうでもいい。こういうヘンテコリンな設定が、この映画を一筋縄ではいかないものにしているのだ。

 この構造をさらに極端にデフォルメしてパート2を作ると、最高のコメディ映画になりそうだけどなぁ。

2001年11月10日公開予定 銀座シネパトス(レイトショー)
配給:グルーヴコーポレーション 配給協力:アースライズ 宣伝:オムロ

(上映時間:1時間46分)

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