スパイキッズ

2001/10/12 松竹試写室
ロバート・ロドリゲス監督が子供の夢を叶えるキッズ版スパイ映画。
ハイテク秘密兵器が次々登場してワクワクする。by K. Hattori

 東西冷戦時代、敵味方として知り合ったスパイ同士が恋に落ち、周囲の抵抗を押し切って結婚した。やがて冷戦も終結してスパイ・カップルたちも平和な生活を送れるようになるはずだったが、冷戦時代に開発された秘密兵器を巡って、子供たちまで巻き込んだ壮絶な戦いの火ぶたが切って落とされる。監督・脚本・製作は『デスペラード』『フロム・ダスク・ティル・ドーン』『パラサイト』のロバート・ロドリゲス。彼の持っているB級テイストと旺盛なサービス精神、そして拭いがたい子供っぽさがこの映画の中では見事に溶け合って、荒唐無稽なスパイ・アクション映画の子供版を成立させている。これは007などのスパイ映画を観てきた大人たちも、『名探偵コナン』が大好きな子供たちも一緒に楽しめる、ファミリー・エンターテインメントだと思う。

 主演はアントニオ・バンデラスとカーラ・ギグノ、アラン・カミングなどだが、真の主役はアレクサ・ヴェガとダリル・サバラという2人の子役だろう。ギグノ扮する元女スパイの名前がイングリットで、バンデラス扮する元凄腕スパイ、グレゴリオ・コルテスの上司がデブリンというのは、ヒッチコックの傑作スパイ映画『汚名』からの引用だろうか。なおデブリン役にはとっても有名な俳優がキャスティングされていて、最後に1シーンだけ登場するのですが、この演出には爆笑です。チーチ・マリン、ダニー・トレホといった、ロドリゲス組の常連俳優が出演しているのも嬉しい。しかも今回は彼らも、ファミリー映画らしくチャーミングな役なのです。

 かつての大物スパイカップルが悪の組織に捕らえられ、その子供たちが両親を救い出すために敵の秘密基地に乗り込んでいくというストーリー。悪の組織が副業で子供向けのバラエティ番組を作っているという設定で、ファンシーかつグロテスクなデザインの改造人間やロボットたちが次々に登場してくる。見どころは荒唐無稽なほどハイテク化された秘密兵器の数々。小学生時代、怪しげな「スパイ事典」や「秘密兵器図鑑」を眺めてワクワクしていた気分や、テレビの「007特番」で映画のハイライトシーンを見て楽しんでいた時の気持ちが甦ります。秘密兵器の存在によって、人間の能力が無限に拡張されていくという無邪気な感覚。それを全面的に肯定して、次から次に不思議な秘密兵器を持ち出してくるアイデア。これがあるからこそ、年端もいかない子供が大人相手に大活躍するという話も成り立つのです。この映画を面白がるには、大人も子供の心に戻らなければなりません。

 子供の活躍を大人がバックアップし盛り立てるという作りなので、バンデラスもそれほど華々しい活躍をするわけではありません。しかし子供たちの両親が「凄腕スパイ」だったということを、導入部の昔話だけで納得させてしまうあたりは上手いもの。宿敵同士のデート場面などは微笑ましい笑いを誘います。案外ロドリゲス監督は、ロマンチックな映画を撮っても上手い人なのかもしれません。これは意外な発見でした。

(原題:SPY KIDS)

2001年12月15日公開予定 丸の内ピカデリー2他・全国松竹東急系
配給:アスミック・エース

(上映時間:1時間28分)

ホームページ:http://www.spykids-jp.com/

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