ヤング・ブラッド

2001/10/01 日本ヘラルド映画試写室
「三銃士」に香港流アクションと西部劇テイストをからめて映画化。
全体にひどく大味で、ちっともワクワクドキドキしない。by K. Hattori

 17世紀、ルイ13世時代のフランス。王権を陰から操ろうとするリシュリュー枢機卿は、札付きの騎士フェブルを使って国王親衛隊である銃士たちを迫害する。幼いダルタニアンは元銃士だった父と母を目の前で殺され、父の親友だった元銃士プランシェを親代わりにして剣の修行を積む。十数年後、銃士隊に入隊するためパリにやってきたダルタニアンは、尾羽うち枯らした銃士たちの姿を見て愕然とするのだが……。過去に何度も映画化されているアレクサンドル・デュマの小説「三銃士」の映画化。監督はピーター・ハイアムズ。主人公ダルタニアンを演じるのは、『ウェディング・プランナー』でジェニファー・ロペスの婚約者(?)を演じていたジャスティン・チェンバース。宿敵フェブルを『ロブ・ロイ』でも卑劣な剣士に扮したティム・ロスが演じ、銃士たちが守ろうとするフランス王妃がカトリーヌ・ドヌーヴ、その政敵リシュリュー枢機卿をスティーブン・レイが演じている。ダルタニアンが恋する宿屋の娘役は、『恋は負けない』のミーナ・スヴァーリ。

 人々が慣れ親しんだ古典的冒険ドラマに新しい装飾を施し、スピーディーで派手なアクションに慣れた現代の観客にもアピールできる作品を作るというのがこの映画のコンセプトらしい。キャラクターの設定はおおむね「三銃士」から借りてきているが、見せ場は香港流のワイヤーアクションと西部劇流の騎馬スタントだ。ヨーロッパを舞台にしたお話の中に、カンフーとウェスタンが同居しているという、相当にいい加減で無国籍な雰囲気の映画に仕上がっている。物語はダルタニアンとフェブルの対決が中心になるのだが、このお話は単純そうでかなりわかりにくい。これは脚本が未整理なのだと思う。映画冒頭でフェブルがダルタニアンの両親を殺し、幼いダルタニアンは復讐を誓う。ところが物語の後半は、彼の復讐譚にならないのだ。復讐という個人的な動機より、王国の危機を救うという大義の方が大切だという理由はわかる。だったら映画冒頭にある、フェブルとダルタニアンの因縁話は余計だと思う。またこの映画ではリシュリュー枢機卿が何を目的としてフェブルを使っているのか、フェブルはリシュリューの思惑を離れていったい何を目指そうとしているのかもわからない。

 職人監督ピーター・アイアムズの作品にしては、どのシーンにも面白みや迫力がないのはなぜだろう。特にアクションシーンのつまらなさには失望させられた。これはアクション演出のシャン・シンシン個人の責任ではなく、各シーンのカット割りや編集のテンポ、そもそも作品のタッチとアクション演出のバランスまで含めたトータルな問題だと思う。この映画はもっと荒唐無稽なアクションに重きを置いて、リアルな戦闘シーンはなるべく排除した方がよかったのではないか。クライマックスの攻城戦で『プライベート・ライアン』ばりの妙なリアリズムを持ち出してくる不自然さ。このリアリズムの後にはしご段の空中戦チャンバラをやるのはヘンだよ。

(原題:The Musketeer)

2001年11月上旬公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:日本ヘラルド映画 宣伝:メディアボックス

(上映時間:1時間45分)

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