インフィニティ∞波の上の甲虫

2001/09/17 映画美学校第2試写室
∞の形をした南の島を舞台にしたファンタジー映画。
邦楽演奏家・東儀秀樹の初主演映画。by K. Hattori

 フィリピンのリゾート地として近年日本でも人気が高まっているボラカイ島を舞台に、島に来た小説家の男と、映画を撮ろうとしている男の奇妙な体験を描くファンタジー映画。島の空港に定期便の飛行機が着陸し、ひとりの日本人がリゾート客用のコテージにチェックインする。彼は島を観光して回るわけでもダイビングを楽しむわけでもなく、部屋にこもってこの島を舞台にした小説を書き始める。小説の主人公は小説家とは正反対の明るく外向的な性格の青年。彼はビデオを片手に島のあちこちを歩き回り、現地の人たちと親しくなっていく。小説家は執筆に行き詰まると島の中を散歩し、その経験をもとにしてまた小説を書き続ける。小説の中の男は、小説家の分身なのだ……。映画は小説家の男の姿と、小説の中に登場する青年の姿を平行して描いていく。やがて小説の中の青年は不思議はことを話す。彼がこれから撮ろうとしている映画の主人公は小説家で、その小説家の書く作品の主人公が映画を撮ろうとしている彼自身なのだという。こうしてこの物語は、小説家が映画青年の物語を書いているのか、映画青年が小説家の物語を語っているのか区別が付かなくなってくるわけだ。

 小説家の男を演じているのは“邦楽界のプリンス”東儀秀樹。最近はCMでも顔を見かける彼だが、これが映画初出演ということではなく、以前『HeavenZ.』という映画に出演していたことがある。(その前に『風のかたみ』にも舞手として出演しているらしい。)映画青年を演じるのは原田喧太。ふたりが島で出会う島の娘を演じているんは奥菜恵。映画の筋立ては典型的な「胡蝶の夢」なのだが、ふたつの物語が入れ子になったあとも物語をさらに引っ張っていくという構成はなかなかユニーク。ただしこれで約2時間という上映時間は、この内容にしてはいささか長すぎる。あと10分か20分削ると、引き締まった映画になると思うけど。監督の高橋巌はこれが劇場デビュー作。処女作だからいろいろ慎重になって、思い切って尺を短くできなかったのかな。撮影にデジタル・ハイビジョン・カメラを使っているが、画質的にはフィルムと遜色ない。夜のシーンから昼のシーンに移る時など、画面からまぶしさを感じるほど。暗いシーンでもビデオ特有のざらつきや色にじみを感じさせず、今後はますますこの方式での映画撮影が増えるだろうと思わせる。合成や編集などの後処理も楽だしね。

 音楽は東儀秀樹自身が手がけているが、これが南の島のゆったりした風景と見事にマッチしていて素晴らしい効果を上げている。邦楽とリゾート地の風景がマッチするというのは意外な発見。もちろんそこには、東儀秀樹の音楽性というものも大きく寄与している。ただし役者としての彼はあまり演技の幅が広いように思えず、主人公のキャラクターが崩壊していく終盤の面白さが盛り上がらない。奥菜恵はがんばっているけれど、この役はやっぱり日本人が演じると無理がある。現地の美少女を使うべきだったと思うけどなぁ……。

2001年12月1日公開予定 
東京都写真美術館ホール、新宿シネマカリテ、川崎チネチッタ
配給:KUZUIエンタープライズ 宣伝・問い合せ:スローラーナー

(上映時間:1時間59分)

ホームページ:http://www.takahashi8.com/

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