特攻!BAD BOYS

2001/09/17 ムービーテレビジョン試写室
イーキン・チェン、ルイス・クー、スー・チーなど香港若手スターが出演。
映画のできは三流もいいところだがちゃんと楽しめる。by K. Hattori

 旅客機をハイジャックした自爆テロで世界貿易センタービルが倒壊する映像が連日のようにテレビ画面を占領するようになると、ちょっとやそっとの刺激では感覚が刺激されない不感症になってしまう。どんなアクション映画も、実際のテロリズムに比べたら鈴虫のオナラ程度の存在感しかありません。だからこそこういう時は、緻密で凝りに凝ったプロットのアクション映画より、出鱈目でいい加減なオバカ映画の存在が嬉しい。用意周到なテロリストの攻撃から受けた精神的ショックを癒すには、行き当たりばったりな脚本とぬるい演出のC級アクション映画がぴったりなのです。僕は今回この映画を観て、「やっぱり映画はいいなぁ」と思った。これがまるっきりの平常時なら、この映画のプロットの弱さ、構成の雑さ、アクションの迫力のなさ、全体に漂うリアリズムの希薄さなどは批判の対象でしょう。でも現実世界がここまで殺気立っていると、むしろこんな荒唐無稽で現実味ゼロの映画の方が胸にしみるのです。

 特攻チーム「バッドボーイ」は、警察やその他の探偵事務所から見放された人々が最後に頼りとする私立探偵事務所。メンバー3人はまだ若いが、その腕は超一流だ。リーダーのキングはナンパが趣味。相棒のジャックは射撃の天才。キングの妹で事務所の紅一点クイーンは情報収集の達人。今回彼らが依頼されたのは、台湾の大実業家の昔の恋人ヤン・チンと連絡を取り、ふたりの間に生まれた子供を捜すこと。もう一件、無一文の若者からはマカオで突然消えたシャドーという名の恋人を捜してほしいという依頼を受ける。キングは数日前にクラブで見かけた若い女が、ヤン・チンの娘とシャドーに瓜二つであることに気づいており、この仕事は楽勝だと高をくくる。あっと言う間にその女を見つけたキングだが、彼女はイレブンと名乗り、マカオの若者も彼女はシャドーと別人だと言う。台湾に渡ったジャックとクイーンも、ヤン・チンから自分に娘はいないという証言を得る。捜査はまったく暗礁に乗り上げてしまうのだが……。

 とにかく話がかなり出鱈目だし、エピソードのつながりもいい加減。それでも何とか映画が観られるのは、出演しているスター俳優の魅力が大きいからだろう。キングを演じているのは『東京攻略』『決戦・紫禁城』のイーキン・チェン。ジャックを演じるのは『OVER SUMMER』のルイス・クー。クイーンを演じているのは『風雲ストーム・ライダース』『レジェンド・オブ・ヒーロー中華英雄』などでイーキンと共演しているクリスティ・ヤン。そしてヤン・チン、イレブン、シャドーをひとり3役で演じているのがスー・チー。イレブンという役は設定がかなり破綻していると思うのだが、それでも可愛らしく見えるのはスー・チーだからです。

 映画としての見どころは特にない。話は整合性がないし、アクションは弛緩している。でもこのボンヤリした感じがたまらなく素敵。映画ってこれでもOKなんだよなぁと思ったら、それだけで随分と楽しめる。

(原題:BadBoy特攻)

2001年10月27日公開予定 キネカ大森
配給:ギャガ・コミュニケーションズKシネマグループ
(上映時間:1時間41分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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