ホーム・スウィート・ホーボーケン

2001/09/07 映画美学校第2試写室
ダイナーで働くベスばあちゃんが持っていた指輪は1千万ドル!
人々が国宝級のお宝出現に右往左往するコメディ。by K. Hattori

 ハドソン川越しにマンハッタンの摩天楼を望むニュージャージーの小さな町ホーボーケンで、小さな大衆食堂のウェイトレスをしているベス・フラワーズは、いい年をして働きもしないグウタラな孫たちにうんざりしていた。早くに両親を亡くしたからと甘やかしたのが悪かったのか、半年も前に仕事を辞めたきり、毎日テレビの前のソファに陣取ってビールをラッパ飲みするばかり。ベスは孫たちを自立させるために、いっそ家や家財を売り払って自分は旅行にでも出かけようと考える。だがそうはさせじと、孫たちも不動産屋を追い払うなど必死。ところがそんな家庭内のいざこざが、一気に吹き飛んでしまうような大事件が発生する。ベスが亡くなった夫にもらったという指輪を宝石鑑定人にちらりと見せたところ、その鑑定人が思わず生唾を飲み込んで目の色を変えた。なんとその指輪は、かつてフランスの王様が作らせたという時価1,000万ドルのお宝だった!

 アメリカで活動している日本人監督・細谷ヨシフミが、ベン・ギャザラとエリザベス・アシュレイ主演で撮ったコメディ映画。細谷佳史監督(当時は名前が漢字だった)は今から5年前に、野村祐人や永澤俊矢が出演した『SLEEPY HEADS』という映画を作っている。今回は日本人キャストなしで(途中で不動産屋に連れられてくる日本人夫婦がいるくらい)、すべてがアメリカ人のキャスト。舞台になったホーボーケンという町はフランク・シナトラの出身地として有名らしいが、最近はベースボール発祥地の称号をニューヨーク州のクーパーズタウンと争っていることでも知られている。アメリカ随一の大都会マンハッタンとの間にはハドソン川が流れるだけだが、川一本の違いでここまで風景がのどかになってしまうとは日本人にはちょっと驚き。もっとも僕も東京のど真ん中の中央区に住んでいるけれど、周辺の雰囲気はのどかそのものだ。銀座・日比谷・有楽町などと、築地・月島の風景は明らかに違う。ホーボーケンもそんな感じなのだろうか。大都会に隣接した田舎町です。

 リー・リンチェイに間違えられる東洋人青年ジョンのバカっぷりは笑えるし、バカ孫のひとりと付き合っているガールフレンドも面白い。怪しげな宝石商も憎めない。頼りがいがあるのかないのかわからない刑事コンビもいい味出している。白人刑事を演じたトーマス・ジェイ・ライアンは、ハル・ハートリーの『ヘンリー・フール』に出ていた俳優ですが、今回もいかにも怪しげでヨロシイのです。そして主人公カップルを演じるベン・ギャザラとエリザベス・アシュレイの粋な雰囲気……。なのにこの映画、今ひとつうまく弾んでいかない。あと一歩のところで、面白さにブレーキが掛かっているような気がする。この映画は十分に面白い映画なんだけど、物凄く面白くはないのです。なぜか? 僕が欠点だと感じたのは、ヒロインのバカ孫2人組にあまり愛嬌がないこと。このふたりがもっとチャーミングに描かれていると、この映画はさらに2倍も3倍も面白くなったと思うけど。

(原題:Home Sweet Hoboken)

2001年11月2日公開予定 シネクイント
配給:パルコ
(上映時間:1時間32分)

ホームページ:http://www.cuc-int.co.jp/hoboken/index.html

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ