アニバーサリーの夜に

2001/09/03 東宝第1試写室
ジェニファー・ジェイソン・リーとアラン・カミングが共同脚本・監督・主演。
スター俳優が大勢登場する映画だが印象はひどく地味。by K. Hattori

 中堅の実力派女優として映画界で確固たる地位を確立しているジェニファー・ジェイソン・リーと、舞台で実力を養い『タイタス』でブレイクしたアラン・カミングが共同で監督・脚本・主演した(おそらくは)超低予算の集団劇。ビバリーヒルズで暮らすテリアン夫妻は、夫のジョーが作家、妻のサリーが映画女優。ふたりはその日6年目の結婚記念日を迎え、親しい友人たちを招いてパーティを開いた。ジョーは近々映画監督としてデビューする予定になっているのだが、主演女優のスカイがパーティに飛び入り参加することになったのがサリーには気にくわない。飼犬のことでしばしば衝突する隣家のローズ夫妻を招いたのも、騒動の火種になりそうな気配。やがてテリアン宅には、次々と友人たちが到着する。

 監督と主演を兼ねたふたりが自分たちの友人たちをモデルに脚本を書き、モデルになった本人がそれを演じているそうだ。出演者はすごく豪華。スター俳優の友人たちは、やはりスター俳優なのだ。クレジットされている順にめぼしいところだけリストアップすると、パーカー・ポージー、フィービー・ケイツ、ケヴィン・クライン、ジェーン・アダムス、ジョン・C・ライリー、ジェニファー・ビールス、グウィネス・パルトロウなど。中には「往年のスター」もいれば、中堅クラスもいるけれど、ケヴィン・クラインなんて子供まで引き連れて出演しているし、売れっ子のグウィネス・パルトロウが売り出し中のスター女優役で出演しているのも目を引く。

 物語はテリアン夫妻の結婚6周年パーティの朝から始まり、翌日の朝までの24時間を描く。回想シーンなどはなく、周囲に起きるさまざまな出来事や友人たちとの会話を通して、テリアン夫妻の抱えるさまざまな問題が浮かび上がってくるという構成だ。スター俳優が入れ替わり立ち替わり現れるこの映画は、複数のデジタルビデオを使ってわずか19日間で撮影されたという。こうした映画製作手法は、ジェニファー・ジェイソン・リーがドグマ作品『キング・イズ・アライヴ』出演の経験に触発されて提案したものだという。この映画はドグマの誓いには従っていないが、ドグマというひとつの運動が生み出した成果だと言うこともできるだろう。ジョエル・シューマカーの『タイガーランド』もそうだが、ドグマという運動はハリウッドの映画人にも何かしらの影響を与えているようだ。影響を受けていないのは日本だけ。なぜなら日本のインディーズ映画はそもそも低予算なので、ドグマの清貧の誓いがなくてもそれに近いことを昔からやらざるを得なかったからだ。

 登場人物はほとんどが俳優・監督・作家などの映画関係者という設定なのに、物語のテーマは男と女の愛情や夫婦関係の機微、肉親との複雑な関係といったもので、ひどく地味。エピソードの中には大きな事件がいくつか用意されているが、それらがすべて等身大のスケールで描かれていて、あまり大げさに騒がない。面白い映画だけど、観客にアピールするものは少ないと思う。

(原題:The Anniversary Party)

2001年秋公開予定 シャンテシネ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 協力:エスピーオー
宣伝:リベロ、トライエム・ピクチャーズ
(上映時間:1時間55分)

ホームページ:http://www.cinema-angel.com/anniversary/

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