エボリューション

2001/08/29 SPE試写室
宇宙から飛来した隕石が、エイリアンの地球侵略を引き起こす。
生命進化をテーマにしたユニークなSFコメディ。by K. Hattori

 アリゾナの砂漠に墜落した1個の隕石。そこに付着していた原始的な単細胞生物はみるみるうちに進化して、隕石周辺に地球とは別種の生態系を作り上げる。軍は隕石周辺を完全に遮断して独自の調査を始めるが、生物の一部は周囲に漏れだして人々を襲い始めた……。

 生命の起源は宇宙からやってきたという学説は、学会ではあまりまともに取り上げられないらしい。これは「地球に生命が誕生したわけ」を地球外に求めることで生命起源の探求を棚上げし、「無生物からなぜ生物が生まれるか」という疑問を回答不能にしてしまうからだ。だから真面目な学者たちはこの説を非常に嫌う。しかし生命が宇宙からきたという説は、それなりに説得力を持つものであることは確かだろう。映画『レッド・プラネット』でも同じような説が紹介されていたし、SFの世界ではわりとポピュラーなアイデアなのだ。映画『エボリューション』は地球生命の起源について云々する話ではないが、「生命は宇宙からやってきた」という説を踏まえた奇想天外なアイデアがユニークだ。原始の地球に宇宙から生命の種子が降ってきたように、現代の地球に宇宙から生命の種子が降ってくる。しかもそれは、地球の生命が数十億年かけて進化してきた過程を、わずか数日で達成してしまう。単細胞生物は数時間で多細胞生物へ。一部は植物に進化し、一方は動物として無脊椎動物から脊椎動物へ、両生類から爬虫類へと進化していく。これは新しい形での「外宇宙からの侵略」だ。問題は侵略する側に「侵略者」としての自覚がまったくないこと。エイリアンたちは己の身体に刻み込まれた「利己的遺伝子」の命ずるまま、猛スピードで繁殖してアリゾナの砂漠からアメリカ全土に広がっていく勢いを見せる。

 監督はアイバン・ライトマン。エイリアンの管理に失敗した軍に代わって、民間の研究者たちが奮闘するエイリアン版『ゴーストバスターズ』だ。ゴーストバスターズならぬ“エイリアンバスターズ”に扮するのは、人気ドラマ「X−ファイル」でも宇宙人と国家的陰謀を相手に孤軍奮闘していたデビッド・ドゥカブニー、『リプレイスメント』や『悪いことしまショ!』に出演していたというオーランド・ジョーンズ、『アメリカン・パイ』のショーン・ウィリアム・スコット、そして『ハンニバル』のジュリアン・ムーア。画面を埋め尽くす多種多彩なエイリアン(隕石起源の生命体)のデザインと制作は、『ジュラシック・パーク』のフィル・ティペットだ。

 物語のアイデアは面白いし、クスクス笑えるギャグも盛りだくさんなのだが、それが爆発的な笑いを引き出すには至っていないと思う。“エイリアンバスターズ”のチームワークがいまひとつしっくり馴染んでおらず、ひとりひとりの個性的なキャラクターがあまり生きていないように思える。例えばジュリアン・ムーア演じる女性科学者が、やたらドジばかりしているという性格付けなど、クライマックスでギャグに使えそうなのに使っていない。観客を打ちのめす決定打が2,3発ほしかった。

(原題:EVOLUTION)

2001年10月公開予定 日本劇場他・全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
宣伝・問い合せ:トライアル
(上映時間:1時間43分)

ホームページ:http://www.evolution-jp.net/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ