Interview

2001/08/07 松竹試写室
若い監督が製作したドキュメンタリーに映し出される嘘。
これがシム・ウナの引退作になってしまうかも。by K. Hattori

 『八月のクリスマス』『カル』などの作品で知られる韓国の人気女優シム・ウナと、『イルマーレ』『純愛譜』など主演映画が次々日本で公開されるイ・ジョンジェが共演した話題作。この映画の話題は大きく2つある。ひとつはこの映画以降シム・ウナが芸能活動を停止し、このまま引退してしまうのではないかと言われている点。もうひとつはこの映画が、アジア映画としては初の「ドグマ作品」である点だ。監督のピョン・ヒョクはこれが長編映画デビュー作。物語はひとりの映画監督がインタビューを中心としたドキュメンタリー映画を作るというものだが、主人公にフランスへの留学体験があるというエピソードなどは、ピョン・ヒョク監督本人の実体験を反映しているようだ。この映画がドグマ映画であること自体には、もはやあまり意味がない。新人監督のデビュー作に「ドグマ」という冠を付けさせているだけだと思う。(日本でも誰かドグマに申請すればいいのに、なぜ誰もやらないんだろうか? すごく不思議。)むしろこれがシム・ウナの引退作になる可能性が高いということの方が、映画ファンにとっては大問題かも。この映画の彼女の演技と存在感はやはり素晴らしく、このまま引退させてしまうのはもったいない。結婚するという噂もあるようだけれど、結婚後も女優を続けてほしいなぁ。

 映画はミステリー仕立て。若い映画監督ウンソクの撮影隊が、たまたま街頭インタビューで声をかけた美容師見習いのイ・ヨンヒという若い女性。監督は彼女を中心に新しい映画を作ろうとするが、やがて彼女がカメラで語っていた内容がすべて嘘であったことがわかる。務めているという美容院には確かにイ・ヨンヒという女性がいるが、それはインタビューを受けていた女性とは似ても似つかぬ別人だった。ではインタビューを受けていたイ・ヨンヒは一体誰なのか? 物語は一年前、ウンソク監督のパリ留学時代にさかのぼる……。

 愛する人を失って深く傷ついた女性が、カメラの前で自分の恋愛観や恋人との関係について嘘を付くことで少しずつ癒されていくという、物語のアイデアは面白い。カメラは自らを語らない。相手の発言をうながし、相手の言葉を真正面から受け止める。これが一種のセラピー効果を生みだして、虚偽に満ちた言葉の裏側から、やがて真実を引き出していく。しかし僕がこの映画を観ていて釈然としなかったのは、監督のウンソクが美容師見習いのヨンヒと1年前に取材したダンサーの同一性に気づいていたのか否かという点だ。気づいていたのにそれを周囲のスタッフにも漏らさないというのは少々不自然な気がするし、気づいていないのならなぜ彼がヨンヒの取材に執着するのか理由がわからない。このあたりは「気づいているけれど黙って見守っている」というウンソクの態度が、きちんと明確になった方がいいと思う。

 物語や映画の方向性はまったく娯楽映画ではないのだが、シム・ウナというスターが主演することでやや強引に娯楽作として成立させられている。

(英題:Interview)

2001年10月上旬公開予定 渋谷シネパレス(レイト)
配給:GAGAアジアグループ 宣伝・問い合せ:オメガ・エンタテインメント
(上映時間:1時間48分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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