Yamakasi
ヤマカシ

2001/08/01 映画美学校試写室
7人組のパフォーマンス・チーム“Yamakasi”が大活躍する映画。
トリック撮影なしのアクションはさすがにすごい。by K. Hattori

 パリで活動する7人組のパフォーマンス・チーム「ヤマカシ」が、本人たち自身を演じるアクション映画。製作総指揮はリュック・ベッソン。あるテレビ番組でヤマカシの存在を知ったベッソンが、映画『TAXi2』の忍者役に彼らを使ったのが両者のつながりの発端。その後、彼ら自身を主役にした映画を作ろうと考えるのに時間はかからなかった。映画に登場するヤマカシは、幼なじみ7人組によるストリート・パフォーマンス・チームという部分こそ実際の彼らと同じだが、個々のキャラクター設定などは映画用に随分と脚色されているし、物語も当然フィクション。しかし映画の中で演じられている飛んだり跳ねたりのパフォーマンスそのものは、日頃から訓練を積んでいるヤマカシ7人が体を張って披露している正真正銘の本物。準備段階ではさまざまな安全策を講じたそうだが、いざ本番となると命綱なしで高いビルをすいすいよじ登り、フェンスを飛び越え、ビルとビルの間をジャンプし、獰猛な犬たちと追いかけっこをする。

 ベッソンの映画は同時期にジェット・リー主演の『キス・オブ・ザ・ドラゴン』も公開されるが、2本の映画の共通点は、肉体的に鍛練を積んだ人間がトリックなしで本物のアクションを見せるという部分。ハリウッド資本の下でSFXたっぷりの映画も作っているベッソンだが、この2本の映画では「観客を本当に驚かせるのはCGではなく生身のアクションだ!」というメッセージが聞こえてくるようだ。『キス・オブ・ザ・ドラゴン』もこの『Yamakasi/ヤマカシ』もお話の部分はシンプルそのもの。むしろご都合主義的でマンガチックですらある。でもアクションが本物だから、僕はこうした映画の馬鹿馬鹿しい部分をすべて許せてしまうのだ。

 ヤマカシの真似をして木登りをした少年が、持病の心臓病を悪化させて24時間以内に移植手術を受けなければ命が危なくなる。ドナーの手配はしたものの、臓器輸送の実費は家族の負担になる。少年の家族にはとてもそんな金は払えない。「貧乏人に死ねという世の中は間違っている」と憤慨するヤマカシのメンバーたちは、国の医療行政を取り仕切る理事会メンバーの家から金をかき集めようと決意。だが彼らと親交のある刑事はこれを察知して、ヤマカシたちが狙う家に先回りする……。僕はこの脚本をずいぶんとデタラメなものだと思う。少年の心臓病はヤマカシの責任ではないし、心臓移植手続きの依頼をあえて断ったり妨害したわけでもない理事会メンバー宅を強盗のターゲットにするのも筋違いだろう。例外は刑事の依頼を断った厚生参事官ぐらい。しかしこうした“筋違い”のストーリーも、すべてはヤマカシのパフォーマンスを前にするとどうでもよくなる。生身のアクションが生み出す高揚感は、その他のすべての要素を超越し、すべてを正当化してしまうのだ。

 警官隊から延々逃げ続けるヤマカシたちが、建物の中と外を自由に往来する様子は、ツイ・ハークの映画みたい。でもこっちはトリックなしの本物です。

(原題:Yamakasi)

2001年9月22日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:K2、日本ビクター 宣伝:ムービーテレビジョン
(上映時間:1時間31分)

ホームページ:http://www.besson-jp.com/yamakasi/

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