ショコキ!

2001/07/25 シネカノン試写室
ジョビジョバのマギーが初監督したコメディ映画なのだが……。
使い古されたアイデアだからこそ頭使わないと。by K. Hattori

 お笑いグループ“ジョビジョバ”のリーダーであるマギーの初監督作品。脚本もマギーが書いて、ジョビジョバも全員が映画に出演している。彼らと映画の関わりは『アドレナリンドライブ』への出演があり、『スペーストラベラーズ』への原作提供とゲスト出演があるが、本格的に映画作りに関わったのはこれが初めてだと思う。ビルのエレベーターが事故で停止し、1つには見ず知らずの他人同士6人が、もう1つにはジョビジョバのメンバー6人が乗ったまま閉じこめられる。ジョビジョバのメンバーはこの経験を生かして映画を作ろうと計画し、メンバー同士であれこれアイデアを出し合う。それと呼応するように、もう一方のエレベーター内では赤の他人同士のコミュニケーションが始まり、隠されていたそれぞれの人生が少しずつ明らかになってくる。

 エレベーターに人間が閉じこめられるというアイデアは古今東西さまざまな映画に登場する使い古されたものだが、この映画はエレベーターを同時に2基止めてしまい、一方にお笑いグループのメンバーが乗っているというのがミソ。しかしこの映画、そのミソが味付けとしてうまく使われていないような気がする。上映時間は1時間33分。この間にどれだけのギャグを詰め込み、どれだけのドラマを生み出せるかが勝負なのだが、まず第1にエピソードの数が少なすぎる。ギャグの数も少ない。エレベーターの中というのは空間が限定されているから、カメラ位置など絵作りの面で制限が多い。話が面白くなく、しかも絵作りが単調では、1時間半とはいえひどく退屈な映画になってしまう。この映画を「退屈だ」と一刀両断にしてしまうつもりはないが、これは退屈の一歩手前をうろちょろしている内容だと思う。

 この映画には疑問点が多すぎる。そもそもなぜエレベーターの中の人間は、外部と連絡が取れないのだろうか。インターホンが壊れたとしても、真っ昼間のビルでエレベーターが故障したとなればすぐにでも係員が飛んできて、ドアの外から内部に呼びかけたりするはず。そもそも彼らはどの程度の時間中に閉じこめられていたのかすらわからない。トイレ、食事、給水などの生理的な欲求はないのか。エアコンは動いているのか。エレベーターというのはごく身近な空間だから、この程度の疑問というのはすぐに頭をよぎるはず。だがこうした疑問点に、この映画はひとつも答えてくれない。この映画が欲しかったのは、見ず知らずの他人同士が小さな空間に閉じこめられるというシチュエーションだけなのです。だとしたらこれは、エレベーターでなくてもいいはず。渋滞で車の中に缶詰になってもいいだろうし、鉄道事故で新幹線の中で長時間閉じこめられたっていい。エレベーターでなければ話が続かない必然性を、どうしてこの映画に盛り込まなかったのだろうか。

 例えば萩原健一と鈴木一真主演の『ダブルス』という映画は、閉じこめられた人間が外部と連絡を取れない「必然」をきちんと映画いているから面白いのです。

2001年秋公開予定 シネ・アミューズ
配給:ゼアリズエンタープライズ
(上映時間:1時間33分)

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