シェンムー・ザ・ムービー

2001/07/24 東映試写室
ゲーム画面をそのまま大きくすればそれは「映画化作品」なのか?
あまりにもお粗末な内容でガックリ。by K. Hattori

 「シェンムー」という人気ゲームソフトを映画化したものという触れ込みだが、同じく秋に公開される『ファイナル・ファンタジー(FF)』や『トゥーム・レイダー』のようなものを想像した僕が馬鹿でした。これってゲームの画面をそのままスクリーンに拡大投影しているだけじゃないの? PCレベルの画質はともかく、15分で語れる物語をだらだら1時間半も引き延ばすドラマは退屈で仕方がない。ゲームの続編「シェンムーII」発売前のプロモーション活動なのかもしれないが、こんな映画を一体誰が劇場で金払って観るのかな。ゲームそのものだから、『ダンジョン&ドラゴン』よりはゲームファンも納得するのか? いいのかなぁ……。

 僕はこんなものを断じて映画とは認めたくないのだけれど、仮にこれが映画だとして、この作品の目玉や見せ場は一体どこにあるのだろうか。ここでは最新のCG技術が見られるわけではない。絵の動きはインタラクティブに動くゲームとしてはよくできているのかもしれないが、リニアに流れていく映画作品としてはレベルが低すぎる。超リアルな『FF』を引き合いに出さずとも、こちらは既に『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』のCGを観ているのです。ゲームセンターで空いているゲーム機から垂れ流されているデモ画面のような絵をスクリーンにでっかく映し出して、それがどうしたの?

 絵が駄目だからといって、この映画はお話が面白いわけでもない。父親を謎の中国人武術家に殺された芭月涼という青年が、父の敵を討つため中国に渡るという話だが、たったこれだけで1時間半もかけられたんじゃたまらない。登場人物は多いが、話はどこまでもスカスカ。父親とのエピソードやガールフレンドとの話など、肉付けしていけばもうちょっと何とか観られる作品になるでしょうに、そうした配慮はまったく為されていない。

 一番嫌になってしまうのは何度も登場するアクションシーンです。監督の鈴木裕はゲーム版「シェンムー」の製作者でもあり、有名な格闘アクションゲーム「バーチャルファイター」の生みの親でもある。こうしたゲームのアクションシーンは、ハリウッド映画や香港映画のアクションにも影響を与えている。でもそれはゲームの中でバーチャルに行われていたアクションを生身の俳優が演じるから凄いのであって、ゲーム画面をそのまま映画のスクリーンに拡大映写しても、ジェット・リーの生身のアクションには絶対にかなわない。

 主人公と戦う相手がいちいち口ほどにもない奴らばかりで、だみ声ですごんで見せても5秒でやられてしまう連中ばかり。これじゃアクションシーンを観ていても盛り上がりっこない。「主人公危うし!」という場面がまったくないのでは白けてしまう。こうした欠点に比べれば、主人公とヒロインのロマンスが生ぬるいとか、ヒロインがいつも同じ服を着ているとか、印象的な場面では必ず雪が降るといった演出も目こぼしできてしまう。しょせんゲームのプロモーション映像なのでしょう。

(原題:Shenmue The Movie)

2001年9月8日公開予定 新宿東映パラス3、銀座シネパトス他
配給・問い合せ:アートポート、アースライズ
(上映時間:1時間30分)

ホームページ:http://www.shenmue.com/

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