同級生

2001/07/23 映画美学校試写室
イギリスの高校を舞台にした同性愛少年の恋物語。
エピソードの描き方が浅くて軽い。軽すぎる。by K. Hattori

 同性愛の少年を主人公にした青春恋愛ドラマ。自分が同性愛であることを周囲に話せないまま、親や教師の期待する「健全な青少年」を演じてしまうことへの自己嫌悪。同級生のスポーツ少年と結ばれながら、スキャンダルを恐れる彼のために学校内ではあえてよそよそしくしなければならない苦しさ。そんな青春の苦しさを描きながら、この映画のタッチはどこまでも軽い。僕の好みを言えば、「恋する胸の痛み」をもう少し丁寧に描いて欲しかったと思う。同性愛者でない者にとって、同性愛者を主人公にした恋愛ドラマに共感するのは「恋の喜び」や「恋の辛さ」という心情的な部分なのだ。この映画はそこへの踏み込みがまだ浅いような気がする。主人公やその恋人の振る舞いも、「同性愛者だから」という理由が先に立ってしまい、その根本にある「恋愛感情」がうまく浮かび上がってこないように思う。

 恋愛というのはそれに熱中している当人たちにとっては素晴らしいものでも、それを脇から眺めている第三者にはどこか滑稽なものだ。岡目八目。恋愛のいいところも悪いところも、傍目からははっきりとクリアに見える。この映画の序盤はすごく面白いのだが、それは主人公スティーヴンが自分自身の同性愛を自覚し、「自分には世間一般と同じ恋愛は無理」と考えているからだ。彼は自分の周囲で起きる恋愛沙汰から、一歩も二歩も退いたところに立って、高校生たちの幼い恋愛遊戯を眺めている。幼なじみのマークが同じクラスのウェンディに熱を上げているのも、その親友ジェシカが運動部のケヴィンと別れて苦しんでいるのも、スティーヴンにとっては自分とまったく無関係な他人事だ。他人事だからこそ、当事者ではないからこそ、人間は他人に親身になって相談に乗ったり世話を焼いたりすることもできる。スティーヴンだって本当の恋愛経験を持たない子供なのに、彼は同性愛者というアウトサイダーであるがゆえに、周囲の恋愛模様を冷静に見つめていられる。

 しかしスティーヴンは同じ学校のジョンと付き合うようになって、恋愛の“当事者”になってしまう。このあたりから映画序盤の軽いタッチは、物語に似つかわしくないものになっていく。それまでスティーヴンにとって恋の痛みや苦しさは「他人事」であり、他人事であるがゆえにそれはある種の「滑稽味」を感じさせるものだった。それがこの映画の序盤の軽さになっている。しかしスティーヴンが恋愛の当事者になってしまったことで、それまで他人事だったことが他人事ではなくなってしまう。恋の痛みも苦しさも、スティーヴンは当事者として味わうことになるのだ。しかしこの映画はそんなスティーヴンの様子を、それまでと同じような軽いタッチで描き続ける。僕はそれが少し不満なのだ。

 エピソードをもう少し掘り下げれば、この映画は必然的にヘヴィなテーマを描かざるを得ない。この映画は軽いタッチを維持するために、エピソードの掘り下げを回避しているように思える。映画の印象は淡泊だ。

(原題:GET REAL)

2001年9月下旬公開予定 シネマ・カリテ
配給:アスミック・エース
(上映時間:1時間50分)

ホームページ:http://www.asmik-ace.co.jp/lineup/getreal.html

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